新卒・第二新卒で入社した会社で数年勤務すると、入社前には分からなかった会社の実情が見えてきます。「会社の将来性が不安」「人事評価制度に疑問を感じる」等々、これからのキャリアに不安を感じることもあるかと思います。
本記事では、SIerとしてプロジェクトマネジメントやソフトウェア開発を担当している筆者が今後のキャリア形成の考え方、及び納得感のある転職を実現するために意識したいポイントを3点紹介したいと思います。
目次
はじめに
生成AIやクラウド活用が当たり前になった今、IT業界の人材需要はむしろ数年前より強まっています。DX推進やAI導入を担える人材を求める企業は業種を問わず増えており、エンジニアという職種そのものの市場価値は上がり続けていると言っていいでしょう。
ただ、人手不足だからといって、どの会社に転職しても納得できるとは限りません。求人数が多いということは、それだけ選択肢の質にばらつきがあるということでもあります。求職者側が主導権を握りやすい市場だからこそ、何を軸に会社を選ぶかで転職の満足度は大きく変わってきます。
だからこそ、自分自身がやりたいことを見極めたうえで、納得感のある会社を選んでいくことが転職活動を行う上では非常に重要になってきます。
20代でエンジニア転職を考える理由と、後悔しないための最初の分かれ道
転職を考え始めるきっかけは人それぞれです。ただ、実際にどんな理由で動く人が多いのかを一度客観的に把握しておくと、今の自分の状況を整理しやすくなります。
20代エンジニアが転職を考える主な理由
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査」で転職入職者が前職を辞めた理由をみると、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(男性9.1%、女性10.8%)に次いで、「職場の人間関係が好ましくなかった」(男性8.3%、女性10.4%)が男女とも上位に挙がっています。
収入面での不満も、よく聞く転職理由のひとつです。レバテックIT人材白書2024の調査では、20代エンジニアの転職理由として最も多かったのが「収入アップが見込めない」でした。下請け構造の中でマージンが引かれてしまう、実績よりも勤続年数で給与が決まる、といった会社側の事情が背景にあることも多く、個人の頑張りだけではどうにもならない部分があるのも事実です。
そのほか、「将来性が見えない」「やりたい仕事を任せてもらえない」という声もよく耳にします。長く同じ現場に留め置かれてスキルが伸びていない実感がある、会社の教育体制が整っていない、といった状況が続くと、20代のうちからキャリアに焦りを感じるのも無理はありません。
「なんとなく転職」が後悔につながりやすい理由
ここで一度立ち止まってほしいのが、「特に理由はないけれど、今の会社を辞めたい」というケースです。この状態のまま転職活動を始めてしまうと、面接で志望動機を聞かれたときに答えが薄くなり、熱意が伝わりにくくなります。企業側からすれば「本当にうちに興味があるのか」「またすぐ辞めるのではないか」という不安につながりやすく、選考でも不利に働きがちです。
さらに厄介なのは、理由が曖昧なまま次の職場を決めてしまうと、結局また同じような不満を抱えて再び転職を考えることになりかねない点です。今の職場への不満が、本当に「会社」の問題なのか、それとも「配属先のプロジェクト」や「一時的な繁忙期」といった、環境を変えれば解消する可能性のある問題なのかを切り分けておくことが、この後のキャリアの棚卸しをより意味のあるものにしてくれます。
これまでのキャリアの棚卸とこれからのキャリア形成を考える
転職活動を行う際に、最初に行いたいことは、自分自身のキャリアの棚卸しと、今後のキャリア形成を考えることです。
闇雲に転職活動を始めても、面接の場で面接官からの質問に上手く答えることはできません。また、仮に転職できたとしても、入社前後にギャップがあり、結局やりたかったことが実現できなかったと後悔する結果になるかもしれません。
そうならないためにも、これまでのキャリアの棚卸しとこれからのキャリア形成は時間をかけて取り組んでいきましょう。
具体的なポイントは以下の通りです。
キャリアの棚卸し
自身がこれまでに取り組んできた業務を時系列に沿って書き出していきます。書き出していく項目は、以下のようなものが挙げられます。
[自身の役割]:リーダー・スタッフなどの自身の役割を記載しましょう。
[習得できたスキル]:資格・伸ばせた能力・得た知識などを記載しましょう。
[実績]:定量効果や定性効果などを第三者にも伝わるように記載しましょう。もし表彰などを受けた実績があれば、合わせて記載してアピールしましょう。
ポイントとしては、以下の2点です。
- 第三者にも説明できるように、定量的・具体的に書くこと。
- 自分自身がどのように感じたのか、良かった点・悪かった点も書き出しておくこと。
キャリアの棚卸しの結果は、職務経歴書や、この後のキャリア形成にも活用する基盤となるものです。何度も見直しを行い、納得のいくまで書き出していきましょう。
これからのキャリア形成
自身がこれから目指していきたいキャリアを書き出していきます。キャリア形成でよく使われるフレームワークに「Will・Can・Must」というものがあります。
[Can]:今できること
[Must]:やるべきこと
フレームワークに沿った形で、これからのキャリアに望むことを埋めていきましょう。
また、上記と合わせて「やりたくないこと・変えたくないこと」もリストアップしていくことをおススメします。転職を考えていると、隣の芝生が青く見えるものです。自分の興味のない仕事内容や、今の会社で満足していたこと(年収・勤務地など)も書き出していきましょう。
さて、キャリアの棚卸しとキャリア形成を行った結果をもう一度眺めてみると、自身がどのようなことに興味があるのか、現状何に不満を感じているのかが見えてくると思います。
これからのキャリア形成結果を、今いる会社で実現できていること、今いる会社でも努力をすれば実現できること、今いる会社では実現できないことに分けてみてください。
もしも、今の会社でも努力をすれば実現できることが多いなら、その努力をしていくことも一つのキャリア形成です。ただし、自身の望むキャリアが、今の会社では実現できない場合は、見切りをつけて転職の準備に移っていくことも重要です。
20代前半と後半で変わる、企業からの見え方
キャリア形成を考えるうえでは、年齢による評価軸の違いも押さえておく必要があります。20代前半のうちは、スキルや実績が多少足りなくても「今後の伸びしろ」を評価してもらえるポテンシャル採用の枠が豊富にあります。極端な話、未経験に近い状態からでも、熱意と学ぶ姿勢さえ伝われば拾ってもらえる企業は珍しくありません。
ところが25歳を過ぎたあたりから、企業側は少しずつ即戦力性を求め始めます。「〇〇の実務経験〇年以上」といった条件が増えてくるのはこのためです。20代後半でキャリアチェンジに近い転職を考えるなら、これまでの経験をどう新しい職種や業界に転用できるかを、自分の言葉で具体的に説明できるかどうかが鍵になります。
つまり、Will・Can・Mustを整理する際は「今の自分に何ができるか」だけでなく「今のタイミングだからこそ何を武器にできるか」まで踏み込んで考えておくと、この後の市場価値の調査もより解像度の高いものになります。
自分自身の市場価値を調査する
キャリア形成が完了したら、次は自身の客観的な評価として市場価値を調査していきましょう。市場価値の調査には、転職エージェントを活用することがおススメです。
転職エージェントとは人材紹介サービスの一つです。優秀な人材が欲しい企業と、良い企業で働きたい求職者との間に立って、求人の紹介や企業の詳しい情報を提供してくれます。
転職エージェントは、企業がどのような人材を求めているのかを熟知しています。即ち、「転職エージェントからの紹介数が多い」=「転職のプロ目線から見ても、企業に紹介できるに足る人材」=「自分自身の市場価値が高い」ということになります。
また、紹介数が少なかったとしても、悲観することはありません。転職エージェントによっては、面談や書類の添削サービスなどのサポートが充実しています。これらのサポートを活用して、自身の強味の深堀に役立てましょう。
自分自身の市場価値は、年収などの就労条件に直結する重要な情報です。転職エージェントなどの第三者の評価も交えて、正確に測っていくことを心がけましょう。
職種・年代別に見る、エンジニアの年収相場
漠然と「市場価値」と言われてもピンとこないという人のために、具体的な数字も押さえておきましょう。
IT・Web業界に特化したハイクラス転職エージェント、JACリクルートメントが公開しているデータによると、同社を通じて転職した20代IT人材の平均年収は597.1万円です。役職別に見るとメンバークラスで594.1万円、管理職以上で689.7万円、職種別ではAI・MLエンジニアが694.6万円、セキュリティエンジニアが635.5万円など、専門性の高い領域ほど高い水準になっています。
一方、doda「平均年収ランキング」では、20代全体の平均年収は342万円、そのうち技術系(IT/通信)に絞ると367万円という結果が出ています。ハイクラス層の実績が中心のJACのデータと比べると、こちらの方が20代エンジニア全体の相場感に近いイメージです。両者を見比べることで、「今の自分がどのあたりに位置しているのか」「どこを目指せば年収レンジが上がるのか」がイメージしやすくなるはずです。
先ほど触れた収入面の不満も、実際の相場を知らないまま抱え続けているケースは少なくありません。裏を返せば、収入面での市場価値を正確に把握しないまま今の会社に留まり続けることが、一番もったいない選択とも言えます。
転職してよかった人・後悔した人の違い
ここまでキャリアの棚卸しと市場価値の話をしてきましたが、実際に転職した人たちの声を見ていくと、「よかった」と感じる人と「後悔した」と感じる人の間には、はっきりとした共通点があります。
「IT業界に入れば安心」という思い込みが後悔を生む
後悔しやすいのは、業界名だけで転職先を決めてしまったケースです。「IT業界は将来性があるらしいから」という理由だけで飛び込むと、入社後に思っていた開発業務ではなく、運用の問い合わせ対応が中心だった、というギャップに直面しがちです。同じIT業界でも、自社開発かSESか、どんなフェーズのプロジェクトに関わるかで働き方はまったく違います。業界単位ではなく、日々の業務の比重まで具体的に確認しておくことが、入社後のミスマッチを防ぐ一番の近道です。
年収だけを基準に転職先を選ぶのも、同じ理由で危うい選び方です。年収が上がっても、学習時間が確保できない働き方だったり、成長環境が合わなかったりすると、結局長く続けられずに再び転職を考えることになりかねません。
転職回数の多さより、経験の質が見られている
「1年のうちに何度も転職して大丈夫なのか」と不安になる人も多いはずです。ただ実際のところ、面接で見られているのは回数そのものではなく、その理由と、そこから何を得たかです。「技術的に挑戦できると思っていたのに、実際は古いシステムの保守だけだった」というようなミスマッチが理由であれば、むしろ「早めに見切りをつけて動ける人」という評価につながることもあります。逆に「なんとなく会社が嫌になったから」という理由しか語れないと、回数に関係なくマイナスの印象を与えてしまいます。
「次の3年で何を積みたいか」で選べているかどうか
よかったと感じている人に共通しているのは、「今の不満から逃げる」だけでなく「次の職場で何を積み上げたいか」まで言語化できていた、という点です。開発をやりたいのか、インフラをやりたいのか、あるいは社内SEのようにユーザーに近い立場で働きたいのか。ここが具体的になっているほど、選ぶべき会社の輪郭もはっきりしてきます。
反対に、面接での志望動機がぼんやりしていると、たとえ本人にどれだけ強い意欲があっても、企業側からは志望度の低さや準備不足として受け取られてしまうことがあります。特に20代の場合、自分では十分に熱意を示しているつもりでも、面接官には熱意が伝わりきらないケースは少なくありません。前のセクションで整理したキャリアの棚卸しは、この「次の3年で積みたい経験」を自分の言葉で語れるようにするための土台でもあるのです。
働きたい会社の情報収集
最後に、実際に自分自身が働きたい会社の情報収集行っていきましょう。こちらに関しても、実際に転職エージェントを活用することがおススメです。
会社の情報収集として、実際に求人情報を探していくことになるのですが、膨大な求人の中から、自身に合った良い求人を探していくことも非常に時間がかかります。そこで、転職エージェントを活用して求人探しの時間を削減するのはいかがでしょうか。
転職エージェントでは、あなたの希望・適正を事細かにヒアリングしたうえで、おススメの求人を紹介するため、自身に合った求人を探す手間が省けます。紹介求人が希望にそぐわない場合も、その旨伝えたら適宜修正してもらえます。
転職エージェントを最大限活用して情報収集を行うことが、納得感のある転職を実現するに重要なポイントです。
求人票だけでは分からない部分をどう埋めるか
エージェント経由で求人を紹介してもらうのと並行して、自分自身でも企業研究をしておくと、面接での質問の質が上がりますし、入社後のギャップも減らせます。なかでも研修体制と教育環境は、優先して確認しておきたいポイントです。
未経験に近い状態で転職する場合、入社後1〜3か月の間にどれだけ手厚くサポートしてもらえるかで、その後の成長スピードは大きく変わってきます。求人票に「研修あり」と書かれていても、実態は資料を渡されるだけということもあるため、面接の場で「入社後最初の1か月はどんな業務から始まりますか」と具体的に聞いてみるのがおすすめです。
もうひとつ有効なのが、実際にその企業で働いたことがある人の口コミです。求人サイトやSNS上の評判には信憑性の低い情報も混ざっているため、良い評判だけでなく気になる評判にも目を通したうえで、「それが事実だったとしても働き続けられそうか」という視点で読むようにしましょう。エージェントの担当者に企業の内部事情を直接尋ねてみるのも、求人票だけでは見えてこない情報を補う手段のひとつです。
まとめ

20代は今後のキャリアを考えるうえで非常に重要なタイミングです。
今の会社に不満を感じているのであれば、一度これからのキャリア形成を考えてみるのはいかがでしょうか。ただし、その不満が「会社そのもの」の問題なのか、「今の配属先」だけの問題なのかを見極めることが、後悔しない転職の第一歩になります。転職を考えている場合は、転職エージェントを利用して市場価値の調査と情報収集を行っていくことをおススメします。
もう一度「20代ITエンジニアが納得感のある転職を実現するために意識したい3つのポイント」を読む ↑
転職活動を在職中からすべき理由
エンジニアの転職活動は、毎月の給料が保証されている在職中から始めるのがおすすめ。退職後でお金に余裕もないと、焦ることで判断が鈍り『ミスマッチ』を起こしかねません。
まずは、在職中から転職エージェントに複数登録しておき、初回の無料カウンセリングだけでもしておきましょう。あとはキャリアアドバイザーが応募者の状況に応じた求人案件の紹介や、面接の日程調整や給与年収交渉などを行なってくれるのでとても便利です。
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