エンジニアは多様な働き方ができるのも魅力です。副業やフリーランス(個人事業主)として活動をはじめる場合、収入・経費の管理や確定申告などの経理業務を自分で行う必要があります。
大手独立系SIer企業で3年程度インフラエンジニアとして働いた後、Webライターのフリーランスとして活動している筆者が、副業・フリーランスをはじめてみたいエンジニア向けに、確定申告の基礎ややり方・手順をわかりやすく解説します。
※筆者の運営ブログ:ちっびーのIT講座
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目次
副業・フリーランスで活動するエンジニアは確定申告が必要?
近年ではIT技術の発達や働き方改革の影響もあり、フリーランス(個人事業主)として独立して働くエンジニアや、副業・ダブルワークで働くエンジニアも増えています。
しかし、副業・フリーランスの場合、会社に代わりに税金を納めてもらえないため、自分で確定申告をして税金の手続きをする必要があります。ここでは、確定申告とは何か、詳しく紹介します。
そもそも確定申告とは?
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までに得た収入や経費などを計算し、それに対する税金を確定させて申告を行うことです。
会社員であれば年末調整を受けることで、会社が代わりに税金を納めるため、原則として確定申告が不要になります。
一方、フリーランスとして自分の事業で稼いだ収入がある人や、副業などで複数の会社で働いている人は、確定申告をしなければならない可能性があるので注意しましょう。
エンジニアで確定申告が不要なケース
エンジニアが副業で働く場合や、フリーランスとして独立して働く場合でも、確定申告が不要なケースがあります。
ここでは、確定申告が不要になるケースについて詳しく紹介します。
会社員で働いている場合
会社でエンジニアとして働いている場合、勤め先で年末調整を受けることで、納税の手続きが完了するため、原則として確定申告が不要です。
なお、年末調整は、1つの勤め先でしか受けられないので、ダブルワークにより2つ以上の会社で働いている場合、いずれかのみ年末調整を受けることが可能です。そのため、ダブルワークをする場合、確定申告が必要になるケースが多いでしょう。
さらに、年末調整を受けるにはいくつかの条件があります。たとえば、年間給与額が2,000万円を超える場合は年末調整を受けられないため、会社員のエンジニアでも自分で確定申告をしなければなりません。
また、医療費控除や寄付金控除、雑損控除、住宅ローン控除(1年目)については、年末調整で適用できません。その年に「医療費が多くかかった」「ふるさと納税(ワンストップ特例を除く)をした」といった出来事があった場合、確定申告で控除適用することで、納め過ぎた税金が還付される可能性もあります。
このように、会社員として働くエンジニアでも、確定申告が必要になるケースがあるので注意しましょう。
フリーランスで納める税金がない場合
会社員を辞めてフリーランスとして独立して働く場合、勤め先がなくなり、年末調整を受けられないため、確定申告をしなければなりません。
しかし、確定申告の義務が生じるのは、原則、所得税額が発生する場合です。たとえば、大きな設備投資をしたことで、収入よりも経費が大きくなった場合、所得がマイナスとなり、納めるべき税金が発生しない可能性があります。
このような場合、確定申告をしなくても違法にはなりません。しかし、取引先から源泉徴収を受けている場合や、将来に損失を繰り延べたい場合など、確定申告をしたほうがよいケースもあるので留意しておきましょう。
副業所得が20万円以下の場合
会社員で働きながら、エンジニアとして副業で稼ぎたいと考えている人もいるかもしれません。本業以外の副業所得の合計が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
副業所得は、副業で得た収入から副業にかかった経費を差し引くことで計算できます。
たとえば、エンジニアの会社員として働きながら、副業でその年に25万円の収入を得たとします。副業をするため、その年に新しくパソコンを8万円で手に入れた場合、副業所得は17万円(副業収入:25万円 – 副業経費:8万円)です。
この場合、副業で収入を得ていても、確定申告は必要ありません。ただし、副業所得が20万円以下であったことがわかるように、収入や経費の証拠書類をきちんと管理しておくことが大切です。
エンジニアが経費にできる項目は?バーチャル・レンタルオフィスもOK?
エンジニアが経費にできるものとして、次のような項目があります。
- 地代家賃(仕事のために借りている家の賃料など)
- 旅費交通費(仕事先に行くまでの交通費など)
- 通信費(インターネットの利用料など)
- 消耗品費(マウスやマイクなど)
- 減価償却費(パソコンやソフトウェアなど)
- 接待交際費(取引先との交際にかかった費用など)
- 支払手数料 など
仕事に関係がある出費であれば、経費に計上することができます。そのため、バーチャルオフィスやレンタルオフィスなどでも、業務として利用したのであれば、全額経費として計上することが可能です。なお、勘定科目は「会議費」「地代家賃」「施設利用費」などを用います。
ただし、プライベートと事業の両方に使用する場合、仕事に関わる部分を明らかにしなければ、経費として認められない可能性があるので注意が必要です。たとえば、スマホの通信料であれば、仕事とプライベートに使用した時間で按分することで、その部分を経費として計上することが可能です。
また、パソコンなどの備品を購入する場合、消耗品費(費用)としてその年に一括で経費計上できるケースもあれば、備品(資産)として計上したうえで時の経過に応じて経費計上しなければならないケースもあるので気を付けましょう。
エンジニアの確定申告、その手続き方法とは?
副業やフリーランス(個人事業主)としての活動により、一定以上の収入・所得を得た場合、確定申告をしなければなりません。
ここでは、エンジニアが確定申告をする場合の手続きのやり方について詳しく紹介します。
収入と経費を適切に管理する
確定申告を正しく行うには、収入と経費をきちんと管理する必要があります。取引先から金銭を受け取った場合や、消耗品・備品を購入した場合は、その都度帳簿付けをすることが大切です。
売り上げ・仕入れについては、その証拠となる請求書や領収書もきちんと保管しておきましょう。なお、もしも収入よりも経費が大きい場合、確定申告をしなくてよい可能性もあります。
本業先の源泉徴収票を受け取る
ダブルワークや副業でエンジニアとして収入を得ている場合、本業先で年末調整をし、源泉徴収票を受け取ることが重要です。
源泉徴収票は、所得税法第226条に基づき、原則として、その年の翌年1月31日までに交付されることとなっています。
なお、フリーランスとして独立して働いている場合、源泉徴収票は発行されないため用意する必要はありません。ただし、年の途中で退職した場合は、その勤め先から交付される源泉徴収票が確定申告に必要になるので大切に保管しておきましょう。
青色申告と白色申告のどちらかを選択する
確定申告のやり方には、大きく「青色申告」と「白色申告」の2つの種類があります。とくに手続きをしていない場合、白色申告で確定申告を進めることになります。
しかし、事業規模が大きい場合には、青色申告を選択すれば、さまざまな特典を受けられるため、税金の負担を抑えることが可能です。
ただし、青色申告を受けられるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」に限られます。副業エンジニアとして片手間で収入を得ている場合、「事業所得」でなく「雑所得」に該当する可能性があり、その場合は青色申告を適用できません。
また、エンジニアが事業をしていて、青色申告で確定申告をするには、事前に青色申告承認申請書を期限までに提出しなければなりません。その他にも、帳簿付けのやり方や確定申告での提出書類などにおいて、白色申告と違いがあるので注意しましょう。
青色申告を適用することで、次のようなメリットが得られます。
- 青色申告特別控除(10万円・55万円・65万円のいずれか)を受けられる
- 青色事業専従者給与を利用できる
- 純損失の繰越しや繰戻しができる
このように、青色申告の要件を満たせるようであれば、白色申告でなく、青色申告により確定申告を行ってみましょう。
確定申告を期限までに行う
確定申告の期限は、毎年2月16日から3月15日までです。期限を過ぎて申告をすると、延滞税や加算税といった罰金が課される可能性もあるので注意が必要です。確定申告の書き方は、国税庁が提供している手引きなどを参考にするのが推奨されます。
なお、納め過ぎた税金がある場合は、還付申告が可能です。還付申告は、確定申告と違い、その年の翌年1月1日から5年後まで行うことができます。
確定申告や還付申告をしたら、帳簿や証拠書類はすぐに破棄せず、法律に従って大切に保管しておきましょう。
エンジニアが知っておきたいインボイス制度について
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、令和5年(2023年)10月1日から開始されています。副業で働くエンジニアや、フリーランス(個人事業主)として活動するエンジニアは、少なからずインボイス制度の影響を受けます。
そもそも消費税とは?
消費税とは、商品やサービスを提供する場合にかかる税金です。なお、給与の支払いや受け取りに対しては消費税はかかりません。
たとえば、エンジニアが副業やフリーランスでプログラミングのサービスを取引先に提供した場合、その対価として消費税が含まれた金銭を受け取ります。この受け取った消費税は、所得税とは異なる方法で納めなければなりません。
なお、納めるべき消費税は、原則として、売り上げにかかる消費税から、仕入れにかかる消費税を差し引くことで計算されます。たとえば、100万円の売り上げに対しては10万円の消費税がかかります。一方、80万円の仕入れに対しては8万円の消費税がかかります。この場合、2万円が納めるべき消費税です。
免税事業者と課税事業者
フリーランスや副業のエンジニアとして活動した基準期間(原則2年前の期間)の売り上げが1,000万円以下であれば、免税事業者を選択することができます。免税事業者の場合、消費税の納税義務が免れます。
たとえば、50万円の売り上げに対する5万円の消費税を納税しなくても問題ありません。ただし、10万円の仕入れに対する1万円の消費税の控除もできないので注意しましょう。もしも大規模な仕入れを行うのであれば、免税事業者を選択できる場合でも、課税事業者を選んだほうがよいかもしれません。
基準期間の売り上げが1,000万円を超える場合、その年は強制的に課税事業者になります。基準期間の売り上げが1,000万円以下であっても、「消費税課税事業者選択届出書」を期限までに提出すれば、課税事業者になることが可能です。
このように、課税事業者に該当する場合に、消費税の納税義務が生じます。免税事業者は消費税の納税義務が免れることから得に思えるかもしれませんが、場合によっては、課税事業者を選択したほうがよいケースもあるため正しく理解を深めておきましょう。
インボイス制度による免税事業者への影響
インボイス制度がはじまったことで、仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書(インボイス)が必要です。
インボイスを交付できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。また、適格請求書発行事業者になれるのは、課税事業者のみです。そのため、免税事業者は課税事業者を選択しなければ、適格請求書発行事業者になることができません。
つまり、エンジニアが免税事業者のままでいるとインボイスを交付できないため、取引先が課税事業者で仕入税額控除を適用する際に、その免税事業者からの仕入れを控除できないことになります。
たとえば、売り上げが100万円(消費税10万円)、エンジニアの免税事業者からの仕入れが30万円(消費税3万円)の場合、本来は7万円が納付すべき消費税です。しかし、そのエンジニアからインボイスを受け取れないため、その仕入れは控除できず、この場合の納付税額は10万円となってしまいます。
このように、副業やフリーランスで活動する免税事業者のエンジニアの場合、インボイス制度により取引先の消費税の負担が増えることから、契約金額の減額などを求められる可能性があります。免税事業者だからインボイス制度は関係ないと判断しないよう注意しましょう。
インボイス制度の特例や経過措置
インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者を選択し、適格請求書発行事業者になる場合、「2割特例」が利用できます。2割特例を活用すれば、納めるべき消費税額を売り上げに対する消費税の20%とすることが可能です。また、免税事業者からの仕入れに対する消費税の80%(50%)を控除できる経過措置もあります。
このように、インボイス制度の特例や経過措置を上手く利用すれば、新しく事業をはじめるエンジニアであっても、消費税の負担を抑えることが可能です。ただし、特例や経過措置を利用するには要件があったり、期限が決まっていたりするなど、注意点も多くあるので、正しく制度について理解しておきましょう。
エンジニアが効率よく確定申告を済ませるなら会計ソフトがおすすめ
エンジニアが副業やフリーランス(個人事業主)で働く場合、収入や経費を自分で管理し、確定申告を行う必要があります。エクセルやスプレッドシートなどで管理もできますが、時間や手間がかかることも少なくないです。
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エンジニアが精算を楽にするならクレジットカードを持つのがおすすめ
副業やフリーランス(個人事業主)として活動する場合、プライベートと仕事の出費が混ざってしまうことがあります。そうなると、経理業務をする際に、時間や手間がかかることに加え、ミスも増えます。
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まとめ|フリーランス・副業エンジニアのための確定申告【基礎知識】
副業やフリーランス(個人事業主)のエンジニアとして働く場合、確定申告が必要になります。事業規模が大きい場合、白色申告でなく、青色申告を選択するのがおすすめです。
確定申告を正しく行うためには、収入や経費などの帳簿付けが重要になります。経理業務を効率化するためにも、会計ソフトやビジネスカードの導入も検討してみましょう。