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結婚や出産などのライフイベントを経ても、自分らしく働き続けたいと願う女性とお話しする機会が年々増えています。ただ、働き方の柔軟性が不十分な職場もまだまだ多く、ライフステージの変化にともなってキャリアを諦めざるを得なくなった女性にも数多くお会いしてきました。
私は2017年から2年間、生活雑貨専門店にて接客販売を経験したあと、2019年からの3年間は大手総合人材会社でキャリアカウンセラーとして主にシステムエンジニア職の転職支援に携わってきました。2023年からはフリーランスの人事として、医療・不動産・生命保険業界など幅広い現場で採用業務をお手伝いしています。
販売職やカウンセラー、そして人事というさまざまな立場から求職者や現場のリアルを見つめてきた実感として、未経験から一生モノのキャリアを築きたい女性に心からおすすめしたいのが「エンジニア」という職業です。
今回は、現場での見聞や採用の本音をもとに、キャリアアドバイザーの目線から、未経験からでも十分挑戦ができる女性エンジニア転職のリアルをお伝えします。
目次
エンジニアの仕事とは

スマートフォンのアプリ、ネットショッピング、駅の改札や電子マネー決済など、私たちの暮らしはITシステムによって支えられています。エンジニアの仕事とは、まさにこうした目に見える画面や、裏側で動く仕組みそのものを創り出すことです。
システム開発と言われても漠然としていてイメージがつきにくいかもしれませんが、よく家を建てるプロセスに例えられます。
まず「どんな家を建てたいか」をお施主様にじっくりヒアリングして決める作業があります(=要件定義)。家づくりで言えば、家族構成、予算、譲れないこだわりを整理する段階です。システム開発でも同様に、お客様が抱える課題や「こういう画面でこんな作業を自動化したい」という要望を丁寧に汲み取るところからスタートします。ここでの認識のズレは後行程すべてに影響を及ぼすため、実はもっとも人間力や共感力が問われる工程です。
方向性が固まったら、平屋なのか2階建てか、部屋の間取りはどう配置するかといった大枠の構造を考えます(=基本設計)。システムで言えば画面のレイアウトや、システム同士がどうデータを取り合うかという骨組みを決める作業です。
続いて、システムキッチンの高さやコンセントの位置、壁紙の素材など、細かい仕様まで落とし込んでいきます(=詳細設計)。画面上のボタンの配置、文字数制限、エラーが出たときの表示パターンなど、1つひとつを綿密に仕様書へと落とし込みます。ここを雑にしてしまうと、制作工程でのやり直しが急増します。
設計書が完成して初めて、大工さんが家を建てるように実際にコードを書いてカタチにする作業が始まります(=プログラミング・製造)。
最後に、家が無事に完成しても水漏れや不備がないか点検するように、作ったシステムが設計通り正しく動くか、エラーが起きないかを徹底的に確認します(=テスト)。
エンジニアと聞くと「ひたすら黒い画面に向かってプログラミングをしている人」を想像される方が非常に多いのですが、実際にはこのようにシステム開発における多様な役割が存在します。
お客様と対話して要望を整理するSE(システムエンジニア)、設計書をもとに黙々と手を動かす開発エンジニア、テスト工程に特化して品質を守るテストエンジニア、プロジェクトの進捗や予算を管理するPM(プロジェクトマネージャー)など、持ち場は様々です。
コードを書く作業が得意な人もいれば、人の話を聞いて文章や図にまとめるのが得意な人、細かなチェックが得意な人もいます。自分の強みに合わせた役割が見つけやすい点も、この仕事の隠れた魅力だと感じています。
女性にエンジニア職をオススメできる3つの理由
理系出身で専門知識が豊富でなければなれない職種と思われがちですが、実際には文系出身者や、異業種・異職種からスタートした女性たちが数多く活躍している業界です。
業界全体の男女比で見れば男性の比率が高いことは事実ですが、面談でお会いする女性からは「想像していたよりもずっと居心地がよかった」「チームで助け合う文化があって安心した」という声をよく伺います。
キャリアアドバイザーの立場からも、女性にこそ自信を持って提案したい職種です。その理由を3つの視点からお伝えします。
コミュニケーション力が役立つ

これまで約1000名ほどのエンジニアの転職をお手伝いしてきましたが、意外にも「人と話すのが苦手」「コミュニケーションに自信がない」とおっしゃるエンジニアは少なくありません。
しかし前述の通り、システム開発はチームプレイです。どんなに優れたプログラミング技術を持っていても、周囲と言葉を交わさずにたった1人で完結できる案件は存在しません。
現場では、毎朝10分ほどチーム全員で進捗や困りごとを共有する朝会があったり、仕様の不明点をチャットツールで細かく確認し合ったりと、常に会話が発生します。
そのため、開発現場や採用面接において企業の担当者が最も重視しているのは、技術力の高さ以上に基本的な報連相ができることや周囲と協調しながら仕事を進められる柔軟さです。
技術面で圧倒的な強みを持つスペシャリストはもちろん現場の要ですが、チーム全体の雰囲気を和らげたり、メンバー間の認識ズレをそっとフォローしたりできるジェネラリストが存在して初めて、プロジェクトは円滑に動き出します。
お会いしてきた女性エンジニアの中には、気配りや丁寧なヒアリング力が高く評価され、開発チームとお客さまの間に立つ「橋渡し役」として重宝されている方が何人もいらっしゃいました。
技術の差は入社後の勉強で埋められますが、相手の意図を察して丁寧にコミュニケーションが取れるという強みは、現場で大きな武器になります。
手に職がつけられる

定年延長や共働き世帯の増加にともない、「一生モノのスキルを身につけて長く働き続けたい」と考える女性が増えています。その点で、ポータブルスキルの代表格であるIT技術を身につけられるエンジニアは非常に魅力的です。
女性のキャリアには、結婚、出産、育児、パートナーの転勤など、ライフイベントによる環境の変化がつきまといます。せっかく築いたキャリアを中断せざるを得ない場面に出くわしたとき、「自分には復帰できる技術がある」という事実は、大きな心の支えになります。
実際に、出産や子育てで数年のブランクを経てから転職活動を再開された方にもお会いしてきました。プログラミングの基礎や実務経験というベースがあれば、少しリハビリを行うことで感覚を取り戻せるケースが多く、企業側も「実務経験があるなら」と好意的に評価してくれます。
また、AIの台頭や社会変化によって多くの仕事が自動化されていく時代と言われていますが、ITシステムそのものを生み出し、保守・運用していくエンジニアのニーズは衰えることがありません。社会全体のデジタル化が進む中で、エンジニアはまさに今後も必要とされ続ける職業の筆頭と言えます。
資格の所有以上に「どんなシステムをどのように作ったか」という実務経験そのものが評価される世界です。担当するプロジェクトを1つひとつ積み重ねるたびに、自分の市場価値が確実に高まっていく実感が得られます。
はたらき方が多様である

働き方改革が推進されているとはいえ、働く場所や時間を柔軟にコントロールできる職種はまだまだ限定的です。その点、パソコンとネット環境さえあれば業務が成立するエンジニアは、ワークライフバランスを整えやすい職業と言えます。
店舗での接客、医療や保育の現場など、現地に赴くことが必須な仕事と異なり、成果物がインターネット上にあるからこそリモートワークという選択肢が成立します。
私が担当した方の中にも「週2日出社・週3日在宅勤務」というスタイルで子育てと両立している方や、子供が小さいうちは時短勤務を選択し、成長に合わせてフルタイムに戻したという方が大勢いらっしゃいます。
また、一定の実務経験を積んだ先には「フリーランス」という道も広がっています。フリーランス市場における求人案件の過半数はエンジニア向けのものであり、週3日勤務の案件や完全に時間を自由に選べる案件など、希望に合わせた案件選択が可能です。
もちろん未経験からいきなり自由な働き方が手に入るわけではありませんが、数年の実績を積むことで「自分の生活に合わせた働き方を自由に選べる権利」が手に入るのは、エンジニアという職種ならではの大きな強みです。
未経験からエンジニアを目指す女性が意識しておきたいこと
ここまで魅力的な面を中心にお伝えしてきましたが、未経験から異業界へ飛び込む以上、相応の準備や現実的な厳しさも存在します。転職した後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、あらかじめ知っておいてほしいポイントを整理しました。
学習はまず「完成させる」ことを目指す
未経験から勉強を始める際、分厚い入門書を1ページ目から丸暗記しようとして途中で挫折してしまう方が多く見受けられます。基礎知識のインプットも大切ですが、プログラミング学習で最も大切なのは「小さくてもいいから1つの成果物を完成させる体験」です。
簡易的なお問い合わせフォームや、簡単なToDoリストアプリなど、ゴールが見えやすい課題を自力で作り切ることが成長への近道です。
また、転職活動で提出するポートフォリオ(作品集)についても意識が必要です。スクールで指定された課題をそのまま提出するだけでは、採用担当者の心には響きません。
既存の機能に自分なりのアレンジを足してみる、使う人の利便性を考えて画面デザインを工夫してみるなど、「自分の頭で考えた工夫」を1つでも盛り込んでおくと、面接でのアピール力が一気に高まります。
「未経験可」の実態を正しく理解しておく
求人票によく書かれている「未経験歓迎」「未経験可」という言葉ですが、言葉通り「PCの操作すら怪しい状態でも手取り足取り教えてもらえる」という意味であるケースはごく稀です。
多くの企業において「未経験可」とは、「エンジニアとしての実務経験は問わないが、独学やスクールで基礎を勉強する意欲と行動力がある人」を意味しています。
完全な受動態で応募してしまうと、書類選考の段階で落とされてしまう原因になります。「自分でここまで勉強して、実際にこういうものを作ってみました」という姿勢を見せることが、選考突破の絶対条件となります。
会社選びは教育体制とはたらき方の柔軟性で見極める
未経験を採用する企業と一口に言っても、研修体制や配属先環境は千差万別です。数ヶ月間かけてじっくり研修を行ってくれる企業もあれば、簡単な説明のあとすぐに現場に配置される企業もあります。
面接の場では「入社後の研修期間と具体的なカリキュラム」「最初に配属されるプロジェクトの規模やサポート体制」について確認しておくことをおすすめします。
また、働きやすさに関しても同様です。「リモートワーク制度あり」「時短勤務制度あり」と求人票に書かれていても、実際にその制度を利用している社員がどれくらいいるのかは企業によって異なります。
面接や面談の際に「実際に育児と両立しながら働いているエンジニアの先輩はいますか?」と具体的な実績を質問してみることで、入社後のミスマッチを防止できます。
現実的な大変さも知っておく
エンジニアは魅力的な職種ですが、華やかな側面ばかりではありません。
IT業界は技術のアップデートが非常に早いため、業務時間外での自己学習や新しい知識のキャッチアップが継続的に求められます。子育てや家庭と両立しながら学習時間を捻出することに苦労される声も耳にします。また、プロジェクトの納品直前などの繁忙期には、どうしても残業が発生する場面もあります。
さらに、職場によっては女性比率が低く、同性の先輩や上司に相談しにくいと感じる場面もあるかもしれません。こうした現実的な大変さを理解したうえで、自分のライフスタイルに合いそうな企業を丁寧に見極めていく姿勢が求められます。
年齢よりも意欲と再現性のある経験を見せる
年齢を理由に転職を躊躇される方もいらっしゃいますが、採用側が見ているのは単なる実年齢ではありません。「これまでの経験の中で培ってきた強みを、エンジニアとしてどう活かせるか」という再現性と、新しいことを吸収する素直さ・意欲です。
たとえば前職の営業職や事務職で「マニュアルを改善してチームの業務効率を上げた経験」や「顧客の潜在的な困りごとを丁寧に聞き出した経験」などは、システム開発の現場でもそのまま通用する貴重なポータブルスキルです。
前職での経験を自己分析でしっかり深掘りし、エンジニアとしての適性と結びつけてアピールできれば、未経験からでも十分に内定を獲得することは可能です。
転職事例
未経験からのスタートだと心配だという方も多いと思いますので、これまでにご相談を頂いた方で、未経験からエンジニアに転職した事例について2つご案内したいと思います。
事務職からエンジニアに

事務職ではたらいていたAさんは32歳までに3回転職をしていました。一度はネイリストなど手に職を求めてスクールにも通い、資格取得、ネイルサロンでも勤務していたのですが、女性ばかりの人間関係や若いネイリストばかりの職場に嫌気がさし、事務職に戻って仕事をされていました。
事務の仕事は嫌いではなかったようですが、年収が低く、またこの先も上がらないのではないかという不安があり、相談に来て頂きました。
お話しをお伺いする中で、「手に職をつけたい」という思いが強かったことや、「多少大変でも年収はあげたい」という思いがあり、エンジニアの仕事をご案内しました。Aさんは仕事で「業務効率」を意識し、エクセルではVlookupやVBAなどを利用していたようなので、まさにそうしたスキルも生かせるのではないかと考えました。また、面談でお会いした中で、円滑にお話しされるコミュニケーション力や笑顔の絶えないお人柄もシステム会社で評価を頂けるのではないかと思いました。
AさんもIT業界に興味があったようで、ぜひみてみたいということで、転職活動をスタートしました。
書類選考ではご年齢もあって通過率はやや少なかったですが、数多く応募をいただき、その中から4社ほど1次面接に入りました。その中での1社から、Aさんのコミュニケーション力や明るいお人柄、未経験あらでも挑戦したいという覚悟感を評価いただき、現職よりも20万円upでご内定をいただきました。
Aさんとしては正直もう少し年収を上げたいというお気持ちもあったようですが、今後資格取得や経験を積むことで年収が上がることも確認をされ、無事に入社を決められました。
保育士からエンジニアに

26歳のBさんは保育士をしていましたが、腰痛を経験したことから体力的にも長く続けるのは難しいのではないかと思い、不安なお気持ちでご相談に来られました。お話しをお伺いすると、家に持ち帰って作業する仕事も多いようで、精神的にも疲れているご様子でした。
挑戦できそう、残業が少なそうというイメージから事務職を希望されていましたが、ご年収の上がり幅や求人倍率の高さ(求人に対して希望者が多い)、また雇用形態(契約社員の求人が多い)などをお伝えすると、長くはたらける仕事がいいという結論になりました。
お話しをお伺いしていくと人と話すことは好きであったり、何かを伝えることや表現することは苦手ではないようなタイプであることがわかりました。Bさんにも、成長業界であるIT関連の仕事を提案しました。文系出身だったためエンジニアでモノづくりはピンとこない、自分ではない理系の人が向く仕事ではないかとのことで最初は敬遠されていましたが、IT業界といってもプログラミングだけではなく、調整業務やコミュニケーションを生かしてシステムの使い方をお伝えするインストラクターなどの仕事もあることをお伝えし、転職活動がスタートしました。
転職活動では導入エンジニアやインストラクター、ヘルプデスクなどの職種を中心に活動をされ、結果的に顧客提案の業務が多いエンジニアのポジションでご内定となりました。Bさんもプログラミングだけの仕事は不安と感じていたようで、人とコミュニケーションを取りながら仕事ができること、営業のようにノルマがないことなどに安心をされ、ご入社を決められました。
いかがでしたでしょうか。
女性にとってエンジニアは難しそう、というイメージもあるかもしれませんが、実際にお会いしてきた印象では、思っている以上に馴染みやすい職種です。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
もう一度「未経験でも挑戦可能!女性がエンジニアで活躍する理由!」を読む ↑
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