30代前半・既婚。SIerからWeb系の自社開発企業へ転職した現役エンジニアです。過去には心身ともに限界を感じ、「もう辞めたい」と本気で悩んだ経験も。この体験をもとに、同じように悩む方の参考になる情報をお届けできればと思っています。
「もう辞めたい」。
この気持ちを、僕は一度や二度どころか、数え切れないくらい抱えてきました。だから、今これを読んでくれているあなたが同じ気持ちを抱えていたとしても、それは特別おかしなことでも、弱いことでもないと思っています。
これは僕の考えですが、エンジニアという仕事は「辞めたい」という感情がわりと自然に湧いてくる仕事です。
納期に追われる。
仕様がころころ変わる。
頑張って直したバグの隣で、また別のバグが顔を出す。
夜中にアラートで叩き起こされたこともありますし、朝会で誰かの機嫌をうかがいながら発言するのも、正直しんどい時期がありました。
そういう日々の中で「辞めたい」と思うのは、むしろ当然の反応なんじゃないかと、今なら思えます。
目次
辞めたいと思うのは、珍しいことじゃない
僕の周りのエンジニアに聞いても、「一度も辞めたいと思ったことがない」という人には、正直あまり出会ったことがありません。むしろ、キャリアのどこかで一度は真剣に転職や退職を考えた、という人のほうが圧倒的に多い印象です。
エンジニアという仕事は、成果がわかりやすい分、プレッシャーもわかりやすくのしかかってきます。バグを出せば画面に赤字でエラーが出る。納期に遅れれば進捗会議で詰められる。そういう「逃げ場のなさ」みたいなものが、じわじわと心をすり減らしていくんだと思います。
特に現代は、技術の移り変わりが本当に早いです。新しいフレームワークや言語、開発手法が次々と登場し、「常に勉強し続けなければ取り残されるのではないか」という焦りを感じている方も少なくないはずです。
仕事が忙しいのに、プライベートの時間まで削ってキャッチアップを求められる環境にいると、心が休まる暇がありません。
だから、もし今「エンジニアなんて辞めてしまいたい」と思っているとしても、それはあなたが向いていないからでも、根性がないからでもありません。
単純に、今のあなたが置かれている状況や、周囲からの過度なプレッシャーが、そう思わせているだけなのかもしれない。まずはそこから一緒に考えていきたいと思っています。
僕も、本気で辞めようと思っていた時期がある
少しだけ、僕自身の話をさせてください。
帰宅して夕飯を食べても、気持ちはずっと仕事のままでした。お風呂に入っても頭の中では明日のタスクを考えていて、布団に入る頃には「また朝が来るのか」と気持ちが重くなる。眠ろうとしても眠れず、気づけばスマホを手に取っていました。
当時のことを思い出すと、一番記憶に残っているのは、夜中にスマホで「エンジニア 辞めたい」と検索していたことです。
明日も仕事なのに眠れず、同じように悩んでいる人のブログや掲示板を何時間も読んでいました。「自分だけじゃないんだ」 そう思えて少し安心する一方で、「こんなに多くの人が辞めたいと思いながら働いているんだ」と、逆に怖くなったことも覚えています。
今振り返ると、あの頃の僕は、誰かに「辞めてもいい」と言ってほしかったんだと思います。
僕はもともとSIerでキャリアをスタートしました。客先常駐で、朝はスーツに着替えてクライアントのオフィスへ向かい、夜は自社に戻って残りの作業をする。そんな生活を数年続けていた時期があります。
当時のプロジェクトは、正直なところかなり無理のあるスケジュールで進んでいました。仕様変更は頻繁にありましたし、上流の意思決定が遅れたしわ寄せは、いつも下流の開発チームに来ます。気づけば深夜に一人で黙々とコードを書いている日が続き、休日出勤も珍しくなくなっていました。
当時は30代を目前にして、周囲の友人がライフステージを変えていく中で、自分だけが深夜のオフィスで画面に向かっていることに、何とも言えない焦燥感を感じていました。
既婚ということもあり、家族との時間を全く作れない申し訳なさや、この先何年もこの働き方を続けられるのだろうかという漠然とした不安が、常に頭の片隅にありました。
ある日、正面から「辞めたいです」と言い出せない自分に気づいたことがあります。もともとおっとりした性格で、上司に強く意思表示したり、反発したりするのが得意なタイプではなかったんです。
だから頭の中では、会社を辞めるための「もっともらしい理由」ばかり考えていました。体調のせいにしようか、家庭の事情にしようか。
今振り返ると、自分から強く「辞めます」と押し切りたかったわけではなく、会社側から「まぁ、それなら仕方ないね、辞めてもいいよ」と言ってもらいたかったんだと思います。
自分の意思というより、誰かに背中を押してもらう形で辞めたかった、というのが正直なところです。
でも、辞めた後のことを考えると、それはそれで怖かったんです。
「次の会社でも同じだったらどうしよう」
「この年齢で転職なんてできるんだろうか」
「家族を養えなくなったらどうしよう」
そんなことばかり考えていました。
辞めたいのに辞められない。その状態が、一番苦しかったように思います。
今でこそ退職代行のようなサービスも一般的になり、自分の代わりに退職の意思を伝えてもらう選択肢がありますが、当時はまだそこまで知られていませんでした。だから余計に、自分一人でなんとか理由を作って、角を立てずに辞める方法をずっと考えていた記憶があります。それが自分にとって「もう限界かもしれない」と気づいたきっかけでした。
その頃の僕は、本気で「エンジニアという仕事そのものが自分には向いていないんだ」と思っていました。パソコンの画面を見るだけで胸が重くなるような感覚があって、辞めることばかり考えていた記憶があります。
辞めたかったのは、エンジニアではなく「今の環境」だった
結論から言うと、僕はエンジニアを辞めませんでした。ただし、当時の会社は辞めています。
転職活動を始めて何社か話を聞くうちに、同じ「エンジニア」という仕事でも、会社によって働き方が驚くほど違うことを知りました。
残業時間も、開発体制も、評価のされ方も違う。「エンジニアだからつらい」のではなく、「今の会社だからつらい」のかもしれない。そう思えたことが、自分の中では大きな転機でした。
少し時間が経って落ち着いてから振り返ったとき、自分が本当に嫌だったのは何だったのか、改めて考えてみました。コードを書くこと自体は、実はそこまで嫌いではなかったんです。むしろ、動かなかったものが動いたときの小さな達成感は、今でも好きな瞬間のひとつです。
嫌だったのは、際限のない残業や、無茶なスケジュールを黙って受け入れざるを得ない現場の空気、自分の裁量がほとんどない働き方のほうでした。つまり僕が辞めたかったのは「エンジニアという仕事」ではなく「今の環境」だった、ということに、あとになって気づいたんです。
実際に転職してみると、「同じエンジニアでも、こんなに働き方が違うのか」と驚きました。
もちろん大変なことはあります。でも、毎日「辞めたい」と思いながら出社していた頃とは、心の余裕がまったく違いました。
世間ではよく「エンジニアを辞めるのはもったいない」と言われます。確かに、需要が高くて将来性のある職種だから、手放すのは惜しいという理屈も分かります。でも、心身が壊れそうなときに「もったいないから続けろ」と言われても、それは無理な話です。
僕がここで伝えたいのは、無理に今の職場で耐えろということではありません。「エンジニアという職業そのものを完全に捨ててしまう前に、しんどさの矛先がどこに向いているのかを切り分けてみる価値はある」ということです。
もし、今感じているストレスの原因が、理不尽な人間関係や、ビジネスモデルに無理があるゆえの長時間労働、あるいは自分のスキルとあまりにかけ離れたタスクの押し付けにあるのだとしたら、それは「エンジニア」という仕事のせいではなく、その「職場」や「プロジェクト」のせいです。
この二つは、似ているようでまったく別の問題だからです。
エンジニアという仕事の、地味だけど確かな良さ
環境を変えてWeb系の自社開発企業に転職してから、エンジニアという仕事の見え方が少し変わりました。
もちろん、転職したからすべてがバラ色になったわけではありません。新しい環境では新しい苦労もありました。それでも、「前より生きやすくなった」と思えることは確実に増えました。
僕はいわゆる技術オタクというタイプではありません。新しい技術が発表されるたびに胸が高鳴る、というほどの情熱があるわけでもなく、どちらかというと「仕事だから続けている」くらいの温度感で日々コードを書いています。
それでも、この仕事を続けてきて良かったと思う瞬間は、確かにあります。たとえば、スキルや経験が言語化しやすく、市場価値として評価されやすいことです。何を作ってきたか、どんな技術を使ってきたかを説明できれば、それが次の仕事につながっていく実感があります。
年齢だけでなく、積み上げてきたものが評価される場面が多いのも、この仕事の特徴だと感じます。この「いざとなれば他でも生きていける」という無形の資産は、他業種に比べてもかなり強い強みです。
給与面の水準についても、ベースとなる市場価値が高い分、環境を適切に選べば、理不尽に削られるリスクは低いです。また、今の時代は「エンジニアとしての経験」を持っているだけで、直接コードを書く仕事以外にも選択肢が広がります。
例えば、社内のシステムを調整する情報システム部門(情シス)への異動や、技術的な知識を活かしたWebディレクター、セールスエンジニア、あるいはITコンサルタントなど、異業種に完全転職するよりも、遥かに良い条件を維持したままキャリアをスライドさせることができます。
働き方についても、リモートワークやフレックスタイムを導入している企業が増え、以前に比べると自分の生活に合わせて働き方を選べる余地が広がってきました。僕自身、自社開発企業に移ってからは、朝の満員電車から解放され、家族と夕食を囲む時間を作れるようになりました。
もちろん会社によって差はありますが、少なくとも「働き方を変える」という選択肢自体は、以前より現実的なものになっていると思います。
こうした良さは、派手にアピールされることは少ないですが、日々の生活の質に静かに効いてくるものだと感じています。
自分の市場価値を知ることが、不安を減らしてくれた
環境を変えると決めたとき、自分のスキルが世の中でどのくらい通用するのか、正直まったくわかりませんでした。同じ会社にずっといると、自分の市場価値を客観的に測る機会がほとんどないんですよね。
特に僕のようなSIer出身だと、「自社独自のレガシーなシステムやルールには詳しいけれど、外の世界に出たら一歩も歩けないのではないか」という強い不安がありました。そこで一度、転職エージェントに話を聞いてもらったことがあります。
正直、最初は少し気が重かったです。「転職する気もないのに相談していいんだろうか」と思っていましたし、登録したら無理に応募を勧められるんじゃないか、という不安もありました。
それでも、「今の自分は、どのくらいの評価をされるものなのか知りたい」という気持ちのほうが少しだけ勝って、一歩踏み出してみることにしました。
実際に話してみると、自分では当たり前だと思っていた「要件を調整してスケジュール通りに形にした経験」や「泥臭い仕様変更に対応してきたタスク管理能力」が、意外と他社で評価されるポイントだったりして、少し驚いた記憶があります。
技術の流行り廃りだけではない、汎用的なスキルを自分も持っていたんだなと、少し視界が開けた気がしました。
逆に、これから先もしWeb系を目指すなら、どんなポートフォリオや技術要素を伸ばしていくとよさそうか、といった客観的な意見をもらえたのも良かったです。
何より、「今すぐ転職しなくても大丈夫ですよ」と言ってもらえたことが印象に残っています。
相談したらすぐ転職活動が始まると思っていたので、「市場価値を知るためだけの相談でもいいんだ」と肩の力が抜けたのを覚えています。
これは転職を勧めるための話ではありません。また、エージェントに登録したからといって、すぐに求人に応募しなければいけないわけでもありません。ただ、自分の市場価値を知るための「相談」という選択肢があることは、頭の片隅に置いておいてもいいかもしれない、という程度の話です。
「いざとなったら、自分を必要としてくれる会社は他にもある」と思えただけで、不思議と気持ちが少し軽くなりました。
面白いもので、逃げ道があると分かると、今の仕事とも少し冷静に向き合えるようになります。
実際に転職するかどうかは、そのあとで決めれば十分だと思います。
- レバテックキャリア:現役エンジニアの市場価値やキャリアの方向性まで踏み込んで相談しやすい
- テックゴー:一人ひとりに寄り添ったサポートが丁寧で、転職を急かされにくい
- ギークリー(Geekly):IT・Web業界に詳しく、今後のキャリアパスまで相談しやすい
もちろん、相談したからといって転職しなければいけないわけではありません。まずは「今の自分にはどんな選択肢があるのか」を知るだけでも、気持ちが整理されることがあります。
辞めるか続けるかより先に、整理してみたいこと
ここまで読んでくれた方の中には、「結局、辞めるべきなのか続けるべきなのか」を知りたかった人もいるかもしれません。ただ、僕自身は「辞めるべき」とも「続けるべき」とも言うつもりはありません。そのくらい重要な決断を、誰かの言葉ひとつで決めてほしくないというのが正直な気持ちです。
その代わりに提案したいのは、今すぐ結論を出すのではなく、まず自分が何にしんどさを感じているのかを、少しずつ言葉にしてみることです。
僕自身、当時は「とにかく今の状況から逃げたい」という気持ちが先に立っていて、何が嫌なのかをきちんと考える余裕なんてありませんでした。でも、勢いだけで辞めてしまうと、次の職場でも同じような理由でまたしんどくなる可能性があります。
だからこそ、一度立ち止まって「本当は何が嫌なのか」「この先、どんな働き方をしていきたいのか」を、自分なりに整理しておく価値はあると思うんです。
残業時間などの労働環境なのか。
職場の人間関係や上司との相性なのか。
あるいは、プログラムを書くことそのものへの苦痛なのか。
ひとつずつ分けて考えてみると、見えてくるものがあります。もしその原因が「環境」にあるのなら、必ずしも「エンジニアを辞める」という極端な選択をしなくても、解決の糸口は見つかるはずです。
「今すぐ辞めるか、無理して耐え続けるか」の二者択一ではありません。まずは一度立ち止まって、自分の悩みの原因を整理してみる。小さな一歩ですが、そこから始めてみても、決して遅くはないはずです。
あの日、夜中に「エンジニア 辞めたい」と検索していた僕は、まさか数年後もエンジニアとして働いているとは思っていませんでした。
だから、今この記事を読んでいるあなたも、「エンジニアという仕事はもう無理だ」と結論を出す前に、一度だけ立ち止まってみてください。
辞めるかどうかを決めるのは、そのあとでも遅くありません。
もう一度「「もう辞めたい」と悩んだ僕が、エンジニアを続けて気づいたこと―実体験からお伝えします」を読む ↑





















