「今の案件が嫌なだけなのか、会社そのものを辞めたいのか分からない」
「上司にどう伝えればいいのか。引き止められたらどうしよう」
SESで働いていると、こうした悩みを抱えることがあります。
案件の仕事内容が合わない、スキルが伸びている実感がない、給与に納得できない。あるいは、客先常駐という働き方そのものに疲れてしまった人もいるでしょう。
筆者自身もSESエンジニアとして客先常駐を経験し、「このまま今の働き方を続けていていいのだろうか」と考えたことがあります。ただ、SESを辞めたい理由は人によって違います。今の案件を変えれば解決する人もいれば、会社の制度や働き方が自分に合っていない人もいます。
だからこそ、「SESだから辞めるべき」「3年は我慢すべき」と決めつけるのではなく、まず自分が何に困っているのかを整理することが大切です。
この記事では、SESを辞めたいと感じる主な理由から、辞める前に考えたいこと、退職の伝え方や手順、引き止めへの対応、辞めた後の転職先までを順番に解説します。
- 自分が辞めたいと感じている本当の原因の整理
- 今すぐ退職を検討した方がよいケースと、現職で改善を試せるケース
- 上司への伝え方、引き止め・怒られた場合の対処
- 有給消化やプロジェクト途中の退職で気をつけたいこと
- SES経験を活かして自社開発・事業会社・社内SEなどへ転職する方法
- 年齢や経験年数に応じたキャリアの考え方
「辞めたい」という気持ちを否定する必要はありません。その一方で、勢いだけで次を決めると、同じような悩みを繰り返すこともあります。
今の自分にとって何を変える必要があるのか、一緒に整理していきましょう。
ryo-moriと申します。20代後半・現役のインフラエンジニアです。学生時代からプログラミングを独学し、そのままIT業界に進みました。SESではインフラ・運用保守案件を中心に約5年経験を積みましたが、「このまま今の働き方を続けていていいのか」「将来どんなキャリアを築けるのか」と悩んだこともあります。そうした経験を経て、自分のキャリアを見直し、自社開発企業へ転職しました。
目次
- 1 SESを辞めたいと思うのは珍しいことではない|まずは理由を整理しよう
- 2 SESを辞めたい人によくある9つの理由
- 3 すぐにSESを辞めるべきケース・まず対処してもよいケース
- 4 「案件を辞めたい」と「SES会社を辞めたい」は分けて考える
- 5 SESを辞めると決めたら|失敗しない退職の手順
- 6 SESを辞めたいと誰に言う?伝え方・タイミング・引き止めへの対応
- 7 SESを辞めるときの注意点|怒られた・辞めづらい・有給消化など
- 8 SESを辞めた後の転職先|自社開発・事業会社・社内SEは目指せる?
- 9 年齢・経験別|SESを辞めたい人のキャリアの考え方
- 10 SESを辞めてよかった人・後悔する人の違い
- 11 SESを辞めたい人におすすめの次の行動
- 12 まとめ
- 13 FAQ(よくある質問)|現役エンジニアが回答
SESを辞めたいと思うのは珍しいことではない|まずは理由を整理しよう
「周りの同僚は我慢して働いているのに、自分だけが辞めたいと思っているのではないか…」と不安になる必要はありません。SESで働いていると、案件や会社、常駐先との関係などをきっかけに、転職を考えることがあります。
SESは未経験からIT業界に入る入口になることも多い働き方です。ただし、どんな案件に入るか、どの会社に所属するかによって仕事内容やキャリアの積み上がり方が変わりやすく、本人がコントロールしにくい部分があるのも事実です。
大切なのは、「単にSESが嫌だ」と一括りにするのではなく、「自分のストレスの根本原因がどこにあるのか」を正確に言語化することです。原因を切り分けないまま転職活動を始めてしまうと、次の職場でも同じ失敗を繰り返す原因になりかねません。
自分の不満や悩みがどこから来ているのか、以下のセクションで原因をチェックしてみましょう。
あなたの「辞めたい原因」はどこにある?簡易チェックリスト
以下の項目のうち、あなたが最も強く共感するものはどれでしょうか?自分の本音を確認してみてください。
- 1. 今の案件・常駐先の環境だけがつらい(人間関係が悪い、残業が異常に多い、常駐先のルールが厳しすぎるなど)
- 2. 客先常駐という「働き方そのもの」がつらい(自社への帰属意識が持てない、コロコロ環境が変わるのが苦痛、孤独感が強いなど)
- 3. スキルが身につかない業務から抜け出せない(テスト・運用監視・エクセル作業ばかりで開発案件に行かせてもらえない)
- 4. 給与・評価制度に対する不満が大きい(自分のマージン率や単価が分からない、成果を出しても給料に還元されない)
- 5. エンジニアという職種自体に疑問を感じている(そもそもITスキルを磨くことやプログラミング自体に興味が持てなくなった)
【筆者コメント】
辞めたい理由が1つだけである必要はありません。多くの場合、「スキルが身につかない(3)」と「給料が上がらない(4)」など、複数の要因が絡み合っています。自分の不満が「今の案件」にあるのか、「会社」にあるのか、「客先常駐の仕組み」にあるのかを明確にすることが、次の正しいステップを踏み出す鍵となります。
SESを辞めたい人によくある9つの理由
SESで働く人が「辞めたい」と感じる理由を整理してみましょう。すべてがSES特有の問題とは限りませんが、働き方との相性を考えるヒントになります。
①案件を選べず、やりたい仕事ができない
SESの最も代表的な悩みが「案件ガチャ」と呼ばれる問題です。雇用されているSES会社の営業力や取引先との関係性によってアサインされるプロジェクトが決まるため、エンジニア自身の希望やキャリアプランが反映されないケースが少なくありません。「Web開発の経験を積みたい」と希望して入社したにもかかわらず、全く異なる大規模システムの保守運用やテスト案件に回されるといったミスマッチが日常的に発生します。
②テスト・監視・運用など同じ業務から抜けられない
未経験や経験が浅い段階でテストや監視、資料作成などの下流工程に入るのは一般的ですが、2年・3年と経っても開発工程へステップアップさせてもらえないパターンです。SES企業の中には、高単価な開発案件を取る営業力がなく、参入障壁の低いロースキル案件を大量に回して利益を上げるビジネスモデルを採用している会社が存在します。この状態が長く続くと、次の転職でアピールできる経験が増えにくくなります。年齢だけを気にする必要はありませんが、今の仕事で何を積み上げられているのかは一度確認した方がよいでしょう。
③自分の経験やスキルに合わない案件で働くのがつらい
「経験が浅いのに、十分なフォローがないまま現場へ入れられた」「質問できる人がおらず、常に分からないことを抱えたまま仕事をしている」といった悩みもあります。
スキルが身につかないことだけが問題とは限りません。逆に、自分の経験に対して求められるレベルが高すぎると、毎日強いプレッシャーを感じながら働くことになります。
もちろん、新しい仕事に挑戦することで成長できるケースもあります。ただ、相談できる環境もなく、常に一人で抱え込む状態が続いているなら、今の案件が自分に合っているのかを見直す必要があります。
④現場が変わるたびに人間関係を作り直すのがつらい
数ヶ月から1年単位で常駐先が変わるため、そのたびに新しい職場の人間関係、業務ルール、独自のローカルルールに適応しなければなりません。人間関係の構築が得意な人であれば苦になりませんが、人見知りの傾向がある方や環境変化にストレスを感じやすい方にとっては、精神的な負担が非常に大きくなります。
⑤自社への帰属意識が持てず孤独を感じる
普段の勤務地は常駐先のオフィスであり、自社の上司や同僚と顔を合わせるのは月に一度の自社会や日報のやり取り程度という生活が続きます。常駐先では「外部の業務委託メンバー」として扱われ、自社からは「売上を立ててくる労働力」として扱われているような感覚に陥り、「自分はいったいどの会社の人間なのか」「誰のために働いているのか」という強い孤独感や疎外感を抱きやすくなります。
⑥給与が上がらず、単価との関係にも疑問がある
SES企業では、常駐先から支払われる「人月単価」から会社の利益や経費が差し引かれた分がエンジニアの給与となります。しかし、還元率が公開されていない会社では、自分がどれだけ高い単価で評価されていても、給料が全く上がらないという事態が発生します。同業他社や他職種と比べても給与水準が低いと感じたとき、退職を決意する大きな要因となります。
⑦待機や案件ガチャにキャリアを左右されたくない
前のプロジェクトが終了してから次の案件が決まるまでの「待機期間」が発生した際、会社によっては強い圧力をかけられたり、焦った営業によって希望とは程遠い不人気な案件へ強引にアサインされたりすることがあります。会社の営業力や保有案件によって、希望する方向へ進みにくいと感じる人もいます。
⑧キャリアパスが見えず、将来が不安
SESでの働き方は、特定のプロジェクトに必要なリソースとして参画することが多いため、体系的な教育体制や長期的なキャリアパスが用意されていないことが多々あります。「30代、40代になってもこのまま現場を転々とするのだろうか」「体力が落ちたときに常駐先が見つからなくなるのではないか」という将来への強い不安が、早期の脱出を考えさせます。
⑨きつい・つらい・限界で、心身や生活に影響が出ている
炎上しているプロジェクトにアサインされ、過度な残業や休日出勤が慢性化しているケースです。さらに、常駐先のプロパー社員からの厳しい圧迫やハラスメント、過剰なプレッシャーによって睡眠障害や体調不良をきたしている場合、それはすでに限界のサインです。このような状態では、自分のキャリアを冷静に考えることすら困難になります。
【注意】
すぐにSESを辞めるべきケース・まず対処してもよいケース
「辞めたい」と感じたとき、すぐに退職に向けて動き出すべきなのか、それとも一度立ち止まって状況の改善を試みるべきなのか、判断基準を整理しました。
【早めに休職・退職を含めた対応を検討したいケース】
- 心身に不調が出ている:眠れない、朝起き上がれない、吐き気がするなど、体やメンタルに症状が出ている場合は、何よりも健康が最優先です。無理を続けず、医療機関や信頼できる相談先に相談し、休職や退職を含めて今後の対応を考えてください。
- ハラスメントや違法労働が横行している:常駐先や自社でサービス残業の強制、暴言・ハラスメント、契約内容と全く異なる違法な作業を強いられている場合、まずは自分の安全を優先し、必要に応じて外部の相談窓口も利用しましょう。
- 会社に相談しても改善の意思・能力がない:「案件を変えてほしい」「スキルアップできる環境に行きたい」と明確に伝えているにもかかわらず、合理的理由なく放置されたり、説教されて聞き入れられない場合は、会社側で改善できる余地が小さい可能性があります。
- 不当な圧力や違法な引き止めがある:「辞めるなら損害賠償を請求する」「次の会社に圧力をかける」といった脅しをしてくる会社は悪質です。速やかに退職手続きを行い、必要に応じて公的機関等に相談しましょう。
【まず対処してもよいケース】(現職での環境改善を試みる)
- 現在の案件・現場だけが合わない:自社の制度や人間関係には満足しており、単に今の常駐先の雰囲気や特定の業務内容だけが不満である場合、営業や上司に相談して「案件変更(現場変更)」を申請する価値があります。
- 今の現場であと少しで得られる成果・スキルがある:「あと3ヶ月でこのプロジェクトが完了し、要件定義から開発まで一通り経験した実績がつく」というような状況であれば、実績を完成させてから転職活動をした方が、次の転職で圧倒的に有利になります。
- 希望を伝え切れていない:自社の上司や営業に対して、自分がどのようなキャリアを望んでいるのか、なぜ今の業務がつらいのかを具体的に伝えていない場合、一度相談してみることで優良な別案件を提案される可能性があります。
判断ポイント!
「案件を辞めたい」と「SES会社を辞めたい」は分けて考える
退職を決意する前に、必ず整理しておきたいのが「自分が嫌なのは今の『案件(プロジェクト)』なのか、それとも『SES会社そのもの』なのか」という点です。この2つを混同したまま行動すると、適切な解決策を選べなくなってしまいます。
案件変更で解決する悩み・会社変更が必要な悩みの対比
| 悩み・ストレスの原因 | 案件変更で解決するか? | 会社変更(転職)が必要か? |
|---|---|---|
| 常駐先の人間関係や雰囲気が悪い | 解決する可能性がある | 会社を変える必要は必ずしもない |
| 残業時間が極端に多い・休日出勤がある | 解決する可能性がある | 別の健全な案件へ変更できれば解消 |
| 自社の保有案件が偏っている | 解決しにくい | 会社を変えることも検討する |
| 給与や評価制度に不満がある | 解決しにくい | 会社の制度を比較し、転職も検討する |
| 客先常駐という働き方自体が合わない | 解決しにくい | 自社開発や受託開発なども検討する |
社内の適切な窓口へアプローチする方法
「今の案件を変えたい」と考えた場合、避けた方がよいのが「客先へ先に『案件を降りたい』『退職します』と伝えること」です。自社と客先の間で情報共有ができていない状態になり、かえって話が複雑になる可能性があります。
必ず、以下の手順で社内調整を行いましょう。
- 1. 自社の直属の上司や担当営業に面談を申し込む:「今後のキャリアと現在の業務内容についてご相談したいことがあります」と伝え、時間を作ってもらいます。
- 2. 感情的にならず、客観的な事実と希望を伝える:「常駐先の悪口」を言うのではなく、「現在の業務(例:運用監視)では、目標としている開発スキルの習得が難しいため、次の契約更新のタイミングで開発工程に関われる案件へ変更していただきたい」と具体的に伝えます。
- 3. 契約切れのタイミング(1ヶ月〜2ヶ月前)を見越して動く:SESの契約は1ヶ月〜3ヶ月単位で更新されることが多いため、急に「明日辞めたい」と言うのではなく、契約の区切りに合わせた事前相談がスムーズです。
もし会社側に案件変更の意思がない、あるいは会社自体にスキルアップできる案件が存在しないことが判明した場合は、転職を具体的な選択肢として検討するタイミングかもしれません。
SESを辞めると決めたら|失敗しない退職の手順
会社を辞める決意が固まったら、後々トラブルにならないよう、正しい手順で退職手続きを進めることが大切です。ステップ順に解説します。
①就業規則と雇用形態、退職に関するルールを確認
まずは会社の「就業規則」と自分の雇用形態を確認し、退職に関する手続きを把握します。期間の定めがない雇用契約か、有期雇用契約かによって扱いが異なる場合もあるため、一律に判断しないことが大切です。分からない点があれば、会社の担当部署や公的な相談窓口などで確認しましょう。
②現在のプロジェクトの契約・区切りを把握
現在参画しているプロジェクトの契約期間(単月更新、3ヶ月更新など)を確認します。プロジェクトの区切りや契約更新のタイミングに合わせることで、客先や自社への影響を最小限に抑えられ、スムーズに退職しやすくなります。
③転職先を決めるか、転職活動を開始
特別な事情がない場合は、次の転職先を探しながら退職のタイミングを考える方法もあります。先に辞める場合は、収入や生活費、転職活動にかかる期間も考えておく必要があります。
④直属の上司・会社の担当者へ退職意思を伝える
転職先の内定を獲得したら、自社の直属の上司(または担当営業・人事)に退職の意思を伝えます。伝える方法と口実については次のセクションで詳しく解説します。
⑤退職日、引き継ぎ、有給消化を調整
上司と協議の上、正式な退職日を決定します。併せて、現在抱えている業務の引き継ぎスケジュールと、残っている有給休暇の消化計画を立てます。
⑥退職届など必要書類を提出
退職日が確定したら、書面(または会社の指定フォーマット)で「退職届」を提出します。口頭だけでなく、書面やメールなどの形に残すことが重要です。
⑦最終出社まで引き継ぎと整理を行う
引き継ぎ資料の作成や常駐先の備品(PCやセキュリティカードなど)の返却準備を進めます。最終出社日には、常駐先および自社の関係者へお礼の挨拶を行い、手続きを完了させます。
会社や上司から強いハラスメントを受けていて直接連絡が取れない場合や、退職を申し出ても一切受け入れられず精神的に追い詰められている場合は、「退職代行サービス」の利用も選択肢の一つです。ただし、費用がかかることや、業界内でのトラブルを避ける観点からも、まずは自力での正規の手続きを試みるのが基本です。
SESを辞めたいと誰に言う?伝え方・タイミング・引き止めへの対応
退職を切り出す際の「誰に」「いつ」「どう伝えるか」という実践的なノウハウと、よくある引き止めへの対処法をまとめました。
誰に言う?
一番最初に伝えるべき相手は、「所属会社(自社)の直属の上司」です。上司が曖昧な組織の場合は、自社の担当営業や人事責任者に連絡します。
繰り返しになりますが、常駐先の社員や担当者へ先に話すのは厳禁です。
いつ言う?
就業規則で「1ヶ月前」と指定されている場合は、退職希望日の1〜2ヶ月前に伝えるのがベストです。転職先の内定が出たら、速やかに上司へ「お話ししたいことがあります」と面談を依頼しましょう。
どう伝える?(角を立てない理由と例文)
退職理由は「会社の不満」や「現場の愚痴」を言うのではなく、**「前向きなキャリアチェンジ」**であることを軸に伝えるのがコツです。不満を理由にすると、「それなら改善するから残ってほしい」と引き止める隙を与えてしまいます。
【退職意思を伝える際の会話例文】
「お忙しいところお時間をいただきありがとうございます。本日は今後のキャリアについてご相談とお伝えしたいことがありお声がけしました。以前から目標にしていた『自社プロダクトの開発業務』に挑戦したいという思いが強くなり、この度、別の企業様より内定をいただきました。つきましては、◯月◯日をもって退職させていただきたく存じます。これまで育てていただいたことには大変感謝しております。残りの期間、しっかり引き継ぎを行いますので、よろしくお願いいたします。」
怒られたら?
退職を伝えた際、感情的になって怒り出したり、「身勝手だ」「お前はどこへ行っても通用しない」などと圧力をかけてくる上司も残念ながら存在します。
その場合の対策は以下の通りです。
- 感情的に言い返さず、冷酷なまでに事務的に対応する:相手の怒りに反応する必要はありません。「ご期待に沿えず申し訳ありませんが、決心は変わりません」と静かに伝えましょう。
- やり取りをテキスト(メールやチャット)で残す:口頭での暴言や脅しを防ぐため、面談後に「本日お話しした退職の件について」とメールを送付し、退職意思を伝えた日時と内容の証拠を残します。
引き止められたら?
「給料を上げるから」「次の案件は希望通りの開発案件にするから」といった条件提示による強力な引き止めに遭うことがあります。
ここがポイント!
辞めると言うまで条件を改善しなかった会社が、退職を撤回した後に継続して良い待遇をしてくれる保証はありません。一度「退職を決意した理由」に立ち返り、ブレずに「感謝を伝えつつ、決定事項として辞退する」姿勢を貫きましょう。
―――
筆者自身がSESを辞めようと考え始めた頃は、退職代行サービスがニュースなどで取り上げられる機会も増えていました。「そこまでしないと会社を辞められないのか」と感じた一方で、自分の場合は退職代行を利用するのではなく、まず転職エージェントに相談しました。
次の仕事をどうするのか、今の経験でどんな会社を目指せるのかを整理してから動いたことで、「とにかく今の会社を辞めたい」という状態から少し冷静になれたのは大きかったと思います。
SESを辞めるときの注意点|怒られた・辞めづらい・有給消化など
退職手続きを進める中で、エンジニアが直面しやすいトラブルや疑問点について、具体的な注意点を解説します。
客先に先に退職を伝えない
何度も強調しますが、客先のプロパー社員やリーダーへ個人的に「実は来月で辞めるんです」と話してしまうと、自社と客先の間で情報共有や調整が必要になるため、話が複雑になる可能性があります。まずは所属会社の上司や担当者に相談し、その後の対応は会社のルールに沿って進めましょう。
口頭だけで済ませず、必要な連絡を記録に残す
「言った・言わない」のトラブルを防ぐため、退職意思の伝達、退職日の合意、引き継ぎ計画などは必ずメールやチャットツール(Slack、Teams、LINEなど)の本文に記載して送信し、履歴を保存しておきます。
有給消化は早めに相談する
有給休暇の取得は労働者の権利(労働基準法で認められた権利)ですが、プロジェクトの引き継ぎスケジュールを無視して強引に全消化しようとすると摩擦が生じます。退職日を決める段階で「残りの有給日数は〇日あるため、〇月〇日〜◯月◯日までを有給消化に充てたい」と早めに提示し、引き継ぎ計画とセットで交渉するのがスムーズです。
引き継ぎを理由に無期限の延長を受け入れない
「後任が見つかるまで辞めないでくれ」「このプロジェクトが終わるまで待ってくれ」と言われ、退職日を先延ばしにされるケースがあります。引き継ぎの努力は必要ですが、会社の採用遅れや人手不足の責任をエンジニア個人が負う必要はありません。「〇月〇日をもって退職することは確定です」と期限を明確に切りましょう。
次の会社を「SESじゃない」という一点だけで選ばない
SESに嫌気がさすと、「SES以外ならどこでもいい」「自社開発なら何でも素晴らしい」と思い込んでしまいがちです。しかし、自社開発企業の中にも残業が異常に多い会社や、教育体制が皆無のブラック企業は存在します。単に働き方の形態だけでなく、事業内容、社風、労働環境をしっかり企業研究しましょう。
悪口をSNSや面接でそのまま言わない
現職への不満が溜まっているからといって、X(旧Twitter)などのSNSで具体的な会社名や客先が特定できる形で悪口を書き込むのは絶対にやめましょう。また、転職活動の面接でも「SESの営業がクソだった」「客先が劣悪だった」といった他責の愚痴を話すと、「他人のせいにする人だ」と評価を下げてしまいます。不満は「〜という課題を解決し、もっと〜な仕事に挑戦したい」というポジティブな志望動機に変換しましょう。
【補足】
万が一、会社側から不当な給与未払いを受けたり、強固な退職妨害をされたりした場合は、全国の労働局にある「総合労働相談コーナー」や労働基準監督署、弁護士などの専門機関へ相談することをお勧めします。
SESを辞めた後の転職先|自社開発・事業会社・社内SEは目指せる?
SESを辞めた後の選択肢を考えるときは、「SESではない会社を探す」だけでは不十分です。大切なのは、今の何が不満なのかから次の職場を考えることです。
まずは「辞めたい理由」と転職先をつなげて考える
| 今の悩み | 考えられる選択肢 |
|---|---|
| 客先常駐という働き方が合わない | 自社開発、受託開発、事業会社のIT部門など |
| 開発経験をもっと積みたい | 開発工程を経験できる自社開発・受託開発など |
| 給与や評価制度に不満がある | 評価制度や仕事内容を比較しながら別の企業を探す |
| 今のSES会社の案件や制度だけに不満がある | 案件や評価制度の違うSES企業も含めて比較する |
| 環境を頻繁に変える働き方がつらい | 長期的に同じ組織やサービスに関われる企業を検討する |
自社開発企業を目指す
自社でプロダクトやサービスを企画・開発・運営している企業です。同じサービスに継続して関わりながら、機能追加や改善を続けていける点に魅力を感じる人も多いでしょう。
ただし、「SESを辞めれば自社開発へ行ける」というわけではありません。これまでどのような開発経験を積んできたのか、応募先で何ができるのかを整理する必要があります。
本気で自社開発企業を目指すなら、SES経験をどう評価されるのか、何を準備すべきなのかを詳しく知っておきたいところです。以下の記事では、その点を具体的に解説しています。
事業会社の社内SE・情報システム部門を目指す
社内システムやITインフラ、業務改善などに関わる社内SEも選択肢の一つです。技術だけでなく、社内の利用者や他部署、外部ベンダーとの調整が求められる仕事もあります。
そのため、SESで身につけた現場対応や調整経験が活きるケースもあります。ただし、仕事内容は企業によって大きく異なるため、「社内SEなら楽」「残業が少ない」といったイメージだけで選ばないことが大切です。
受託開発企業を目指す
受託開発では、顧客から依頼を受けたシステムやサービスを開発します。自社内で開発する企業もあれば、案件によって働き方が異なる企業もあります。
SESで培った技術を活かしながら、より幅広い工程を経験したい人にとっては選択肢になるでしょう。求人を見る際は、「どの工程を担当できるのか」「客先常駐はあるのか」まで確認しておきたいところです。
別のSES企業へ移る
「客先常駐そのものが嫌なわけではない。今の会社の案件や評価制度に不満がある」という場合は、別のSES企業へ移ることも選択肢です。
案件の選び方、営業体制、評価制度、待機時の扱いなどは会社によって違います。今の会社だけを見てSES全体を判断するのではなく、自分が不満に感じている部分が次の会社では改善できるのかを確認しましょう。
ホワイトなSES企業の見分け方とは?現役エンジニアが徹底解説!
年齢・経験別|SESを辞めたい人のキャリアの考え方
年齢やこれまでの経験年数によって、転職市場での見られ方や取るべき戦略は大きく異なります。あなたの状況に合わせた考え方を解説します。
新卒・入社1年未満(第二新卒)
「入社して数ヶ月だけど、もう辞めたい…」と悩む若手は非常に多いです。「少なくとも3年は働くべきだ」という言葉を鵜呑みにする必要はありません。劣悪な環境で心を病むくらいなら、第二新卒として早期に動く方が有利です。
ポイント:「なぜ短期で辞めるのか」を反省・整理し、「次はどのような環境で長く貢献したいか」を意欲的に伝えること。ポテンシャル採用(伸び代重視)枠で評価してもらえる年齢です。
20代・経験1〜3年
転職市場で最もニーズが高いボリュームゾーンです。SESで得た基礎スキル(プログラミング、テスト、運用、ドキュメント作成など)を整理し、ステップアップを目指す絶好のタイミングです。
ポイント:「指示通りに動いてきた」ではなく、「現場で工夫したこと」「主体的に学んだこと」を言語化してアピールしましょう。自社開発や受託開発へのチャレンジも十分に可能です。
30代前半
単なる「指示待ちの作業者」からの脱却が求められる時期です。技術力だけでなく、後輩の指導経験、顧客との交渉力、プロジェクトの推進力が評価対象になります。
ポイント:自分がこれまで担当してきた業務の中で「強みと言える領域(特定言語、インフラ領域、業務知識など)」を明確にし、即戦力として貢献できる企業をターゲットにしましょう。
30代中盤以降
未経験分野への完全なキャリアチェンジは難易度が上がりますが、これまでに積み上げてきた「技術力」「マネジメント経験」「深い業界知識(金融、ECなど)」を掛け合わせることで、高待遇での転職が可能です。
ポイント:焦って全く異なる異業種へ逃げるのではなく、これまでのSES経験を「強み」として再定義し、社内SEや受託開発のリードエンジニア、あるいは待遇の良い上位SIer・優良SESを目指すのが堅実です。
―――
ここまで、SESを辞めた後に考えられる主な転職先を紹介しました。ただ、実際に転職を考え始めると、「自分にはどの選択肢が合っているのか」「今のSES経験を次のキャリアでどう活かせるのか」と迷う人も多いでしょう。
SESを辞めることだけを目的にするのではなく、その先でどんなエンジニアになりたいのかまで考えておくことが大切です。
筆者の経験も踏まえながら、SESからキャリアアップするための選択肢や具体的な進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
SESを辞めてよかった人・後悔する人の違い
SESを辞めた後、新しい職場に満足して生き生きと働いている人と、「こんなはずじゃなかった…」と後悔してしまう人には、明確な違いがあります。
筆者自身も、SESを辞めたことで「SESだった経歴そのものが消えたからよかった」と感じたわけではありません。むしろ、SESで経験したことが次の転職でまったく無駄になったわけでもありませんでした。
大きかったのは、次の環境で「どんな仕事を経験したいのか」を自分で考えるようになったことです。SESを辞めること自体が目的になると、次の会社選びを誤る可能性があります。辞めた後に何を変えたいのかまで考えておくことが、後悔しないためには重要です。
SESを辞めてよかったと感じやすい人の特徴
- 「なぜ辞めたいのか」の原因を明確に整理していた:自分のストレスが給与にあるのか、スキル向上にあるのか、働き方にあるのかを理解して転職先を選んだ人。
- SESで得た経験を前向きに捉えている:「常駐先で色々なシステムを見てきた」「異文化への適応力がある」など、SES経験を強みとして整理できた人。
- 転職先の企業研究を念入りに行った:求人票の甘い言葉(「アットホーム」「自由な社風」)に騙されず、実際の開発環境や残業時間、社員の口コミをしっかり確認した人。
SESを辞めて後悔しやすい人の特徴
- 「今の現場から逃げたい」という一心だけで辞めた:次のビジョンを持たないまま衝動的に退職し、焦って内定が出た別の劣悪な企業に入社してしまった人。
- 「SES以外ならどこでもいい」と安易に決めた:自社開発や受託開発という「響き」だけで会社を選び、求められる技術スキルの高さについていけず挫折した人。
- 自分のスキルや市場価値を正しく把握していなかった:自分の実力を過信し、高望みしすぎて転職活動が長期化してしまった人。
辞めた後、実際にSES経験者がどのように感じたのか、具体的なリアルな体験談を知りたい方は、筆者自身の体験をまとめた以下の記事も併せてご覧ください。
SESを辞めたい人におすすめの次の行動
「辞めたい」という気持ちを抱えたまま立ち止まっているだけでは、状況は何も変わりません。あなたの現在の状況に合わせて、今日からできる具体的なアクションを起こしましょう。
まだ迷っている人(情報収集フェーズ)
- ノートやPCに「今の仕事で嫌なこと」と「今後やりたいこと」を書き出して言語化する。
- 自社の就業規則や契約期間を確認しておく。
- 自社の上司や営業に「案件変更の相談」を打診してみる。
辞める気持ちが固まっている人(転職準備フェーズ)
- これまでの職務経歴(担当プロジェクト、使用言語・ツール、役割)を棚卸しする。
- 転職サイトやIT専門の転職エージェントに登録し、自分のスキルの市場価値を確認する。
- 自社開発・受託・社内SEなど、興味のある企業の求人情報をチェックし始める。
限界を感じている人(緊急避難フェーズ)
- 一人で悩みを抱え込まず、家族や友人、信頼できる専門家に相談する。
- 体調に異常がある場合は、無理をせず心身の休養と医療機関の受診を優先する。
まだ退職を決めていない段階でも、求人を見てみること自体は無駄ではありません。今の自分にどんな求人があるのかを知ることで、「あと何の経験が必要なのか」「本当に今の会社を辞めるべきなのか」が見えてくることもあります。
転職エージェント活用のポイント!
まとめ
本記事のポイントを改めて整理します。
- 1. まずは辞めたい理由を整理する:案件、会社、働き方のどこに不満があるのかを分けて考えましょう。
- 2. 原因の切り分けが最優先:不満の根本が「現在の案件」にあるのか、「会社」にあるのか、「客先常駐の働き方そのもの」にあるのかを整理しましょう。
- 3. 適切なステップで退職手続きを進める:内定を得てから退職交渉に入り、自社の上司へ前向きな理由で伝えるのが円満退職のコツです。
- 4. 転職先の選択肢は多彩:自社開発、受託開発、社内SE、優良SESなど、自分のスキルと希望に合わせた選択肢が存在します。
- 5. 逃げの転職ではなく「次で得たいもの」を明確にする:企業研究を怠らず、SES経験を自身の強みとして活かすことが成功の鍵です。
「辞めたい」という悩みは、あなたが自分のキャリアや人生に対して真剣に向き合っている証拠です。この記事で紹介した手順を参考に、焦らず着実に理想のキャリアへ向かって一歩を踏み出してください。
もう一度「SESを辞めたい…と感じたら?辞める前に考えることと退職・転職の進め方」を読む ↑
FAQ(よくある質問)|現役エンジニアが回答
ここからは、この記事で解説してきた内容を踏まえ、現役エンジニアで採用担当もしている運営者が、「SES 辞めたい」に関するよくある質問に対して答えていきたいと思います。
- Q1 SESを辞めたいと思うのは甘えですか?
- 甘えかどうかだけで判断する必要はありません。今の案件や会社、働き方の何がつらいのかを整理し、改善できることがあるのか考えてみましょう。
- Q2 新卒や入社半年でSESを辞めても大丈夫ですか?
- 短期間で辞めることだけを理由に、可能性がなくなるわけではありません。ただし、早期離職の理由や次の会社で何をしたいのかを説明できるようにしておく必要があります。ただし、「なぜ早期に辞めるのか」「次はどう貢献したいか」を面接で前向きに説明できる準備が必要です。
- Q3 SESは何年で辞めるのがいいですか?
- 明確な年数はありません。1〜3年を目安に考える人もいますが、年数だけで判断するより、今どのような経験を積めているかを見ることが大切です。心身に影響が出ているなど、事情によっては年数にこだわらず早めに対応を考えましょう。
- Q4 SESを辞めたい場合、誰に言えばいいですか?
- 自社(所属会社)の直属の上司に伝えるのが基本です。上司がいない場合は営業担当者や人事部門へ伝えます。客先へ先に伝えるのは自社と客先の調整が必要になるため、まずは所属会社に相談しましょう。
- Q5 プロジェクトの途中でも辞められますか?
- プロジェクトの途中であっても、退職について相談すること自体はできます。ただし、雇用形態や契約内容によって確認すべき点があるため、就業規則や雇用契約を確認したうえで、まず所属会社へ相談しましょう。可能であれば引き継ぎに必要な期間も考慮して進めると、話を整理しやすくなります。
- Q6 引き止められたらどうすればいいですか?
- 給料アップや案件変更を提示されても、一度「退職を決意した根本的な理由」を思い出してください。感謝を伝えつつ「決心は変わりません」と毅然とした態度で断るのが基本です。
- Q7 上司に怒られたら退職を撤回するべきですか?
- 怒られたからといって、その場で退職を撤回する必要はありません。相手が感情的になっても、こちらまで感情的になる必要はありません。退職の意思と希望する時期を落ち着いて伝え、必要な連絡は記録に残しながら手続きを進めましょう。
- Q8 有給消化はできますか?
- 有給休暇が残っている場合は、退職日を決める段階で早めに相談しましょう。残日数や退職までのスケジュールを確認し、引き継ぎとの兼ね合いも含めて計画的に進めることが大切です。
- Q9 SESから自社開発・事業会社へ転職できますか?
- 十分に可能です。ただし、ポテンシャルだけでなく、SESで積んだ開発実績や自発的な学習(ポートフォリオ作成など)が求められます。自分のスキルに合わせた事前の準備が成功のポイントです。
- Q10 SESを辞めて後悔することはありますか?
- 「今の現場から逃げたい」という感情だけで企業研究をせずに転職した場合、次の会社でも労働環境が悪く後悔することがあります。「次で何を得たいか」を明確にして転職先を選ぶことが大切です。





















