わがままだと思われて、次の案件に響かないか心配。
更新の連絡が来てしまい、今さら言い出せない。
今の案件(現場)を変えたいとき、相談する相手は客先ではなく自社の営業です。言うタイミングは契約更新の2か月前を目安にし、残業時間や担当工程といった事実と、次の案件でやりたいことを分けて伝えます。断られたら理由を聞いて次の更新に向けて動き直し、それでも何も変わらないなら、問題は案件ではなく会社の側にあると考えてよいでしょう。
案件変更は退職とは別の話です。同じ会社に在籍したまま、常駐先を差し替えてもらう相談にすぎません。退職をほのめかしたり、不満を感情のまま営業にぶつけたりする必要はなく、営業が動きやすい材料をこちらから渡せるかどうかで結果が変わります。
この記事は、会社は辞めずに案件だけを変えたい人に向けて書いています。退職も含めて一度整理したい人は、先にSESを辞めたいと感じたときに考えることと退職・転職の進め方を読んでおくと、自分がどちらの段階にいるのか判断しやすくなります。
転スト運営者のStaff Hです。エンジニア歴16年の現役エンジニアで、中途採用の担当も務めています。SES出身の応募者には、前の現場で案件を変えたいと申し出たか、断られたときにどう動いたかを必ず聞くようにしています。その答えに、その人が自分のキャリアをどう扱ってきたかがはっきり表れるからです。
SES経験者の転職に強いエージェント3選
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目次
SESで案件を変えたいと伝えるのは、わがままではない
案件変更は退職ではなく、在籍したまま常駐先を差し替える相談
SESの契約を結んでいるのは会社同士で、エンジニア本人が客先と直接契約しているわけではありません。本人が案件を変えたいと申し出ても、それは客先との契約を自分で解除する行為にはならず、自社に対して要員交代を相談しているだけです。
実際に客先と調整し、後任を手配し、次の案件を探すのは営業の仕事です。エンジニアの役割は、希望をはっきり伝え、引き継ぎに協力するところまでになります。
申し出ると契約違反になると思い込み、言い出せずにいる人は意外に多いものです。しかし、何も言わずに現場から消えることと、更新のタイミングを見ながら交代を相談することは、まったく別の行動です。後者で責められる理由はありません。
営業がすぐに動けない理由を先に知っておく
相談しても営業の反応が鈍いと、軽く扱われたように感じるかもしれません。ただ、営業が案件変更を進めるには、今の現場に入る代わりの要員と、あなたの次の行き先の2つがそろう必要があります。
SESは、エンジニアを客先に配置して売上を立てるビジネスです。今の案件から抜けた後、次の案件が決まるまでの待機期間がそのまま会社の売上の空白になるため、営業はどうしても現状維持に傾きます。怠けているのではなく、交代そのものに手間とリスクがかかるのです。
だからこそ、変えてくださいと伝えるだけでは足りません。今の現場で何が問題になっているのか、次の案件で何を重視したいのかまでこちらで言葉にしておけば、営業はそれを客先や社内への説明材料にそのまま使えます。この記事で紹介する伝え方は、すべてこの考え方を前提にしています。
相談する前に、不満が案件の問題なのか、どこでも起きる問題なのかを分けておく
案件を変えたい理由は、開発環境、稼働条件、人間関係の3つに大きく分けられます。使いたい技術に触れられない、担当工程がテストから動かないといった開発環境の不満や、残業の多さ、通勤時間の長さといった稼働条件の不満は、現場が変われば改善しやすい部類です。
注意したいのは人間関係です。リーダーと合わない、質問しづらいといった悩みは、今の現場に原因があるのか、前の現場でも同じことが起きていたのかで対処が変わります。毎回似たところでつまずいているなら、案件を変えても同じ悩みを持ち越す可能性が高いので、相談の前に一度振り返っておきましょう。案件変更で解決する悩みと、会社を変えないと解決しない悩みの切り分けは、SESを辞めたいと感じたときの記事で対比表にまとめています。
もう一つ確認したいのが、希望を一度でも口に出したかどうかです。担当範囲を広げたいと思いながら、営業にも現場にも言わないまま諦めている人は少なくありません。営業が知らない不満に、営業は動きようがないのです。
ただし、ハラスメントだけは話が別です。人格を否定される、脅される、性的な言動を受けるといった状況なら、更新の時期を待つ必要はありません。すぐに自社の窓口へ相談し、現場を離れる対応を求めてかまいません。
誰に伝える?窓口は客先ではなく自社の営業・上司
客先のリーダーに先に言ってはいけない理由
毎日顔を合わせるのは客先のリーダーなので、つい先に相談したくなるかもしれません。しかし、客先のリーダーには、あなたの所属会社との契約や人員の入れ替えを決める権限がありません。
商流が深い案件ではさらに厄介です。客先と自社の間に別の会社が挟まっていると、あなたが話した内容が何社か経由して自社に戻ってくることになります。その途中で、事情や希望が抜け落ち、抜けたがっているという情報だけが先に伝わってしまうのです。
そうなると、営業は客先へのお詫びから話を始めなければならず、交代の調整がかえって難しくなります。最初に話す相手は、必ず自社の人間にしましょう。
営業・上司・人事、自分の会社の窓口を確かめる
自社のどこが窓口になるかは会社によって違います。担当営業がそのまま受ける会社もあれば、技術部門の上長や人事が相談を受け持つ会社もあります。
分からなければ、担当営業に「案件変更の相談は誰にすればいいですか」と聞くところから始めて大丈夫です。窓口を確かめるだけなら、変えたいという意思をはっきり示したことにもならないので、気負わず聞けます。
担当営業が誰なのか分からない、営業に話しても取り合ってもらえないという場合は、直属の上長に相談し、適切な窓口につないでもらいましょう。大事なのは、社内の正式な相談ルートに話を乗せることです。
一人常駐や、営業とほとんど話さない場合の切り出し方
自社の人が現場に自分しかいない一人常駐では、黙っていても不満は誰にも伝わりません。営業が把握できるのは、あなたが送るチャットの文面と、面談で話す一言くらいです。
相談のきっかけには、帰社日、定例面談、評価面談が使えます。どれもない会社なら、チャットやメールで面談の時間をもらいましょう。最初の連絡は「今の案件について相談したいことがあります」の一文で十分で、詳しい事情は面談の場で話せば問題ありません。
いつ伝える?契約更新から逆算するタイミング
目安は契約更新の2か月前
案件変更を伝える時期は、契約更新の2か月前を目安にします。営業から更新の連絡が来る頃には、客先の中で次の期間の体制がほぼ決まっていることが多く、そこから相談を始めても今回の更新では動かしにくいからです。
2か月前なら、営業は後任を探す時間と、あなたの次の案件を探す時間の両方を確保できます。1か月前になると、客先の要員調整が先に進んでいて間に合わないケースが出てきます。
なお、2か月前というのは法律で決まった期限ではなく、SESの更新や要員調整の流れから見た実務上の目安です。会社や案件によって適切な時期は前後するので、最終的には営業に確認しておきましょう。
自分の契約期間と更新月を知らないなら、まず営業に聞く
SESの契約は1か月、3か月、6か月ごとの更新が多いものの、自分の案件がどのサイクルなのかを知らないまま働いている人もいます。
更新月が分からなければ、営業に「次の更新はいつですか」と聞いてみましょう。この質問だけなら角は立ちません。更新月が分かれば、その2か月前を相談の期限として手帳に書き込めます。
更新の連絡が来てしまった後でも、言っていい
更新の連絡が来てから言っても遅い、と考える必要はありません。今回の更新で変えるのは難しくなりますが、次の更新に向けて相談を始めるには十分なタイミングです。
以前、中途採用の面接で20代後半のSES出身者から転職理由を聞いたことがあります。テスト中心の現場で案件を変えたいと思い始めてから1年以上、一度も営業に相談しないまま、更新のたびに見送っていたそうです。結局、現場が変わったのは契約が終了したときでした。営業に相談しなかった理由を尋ねると、「言っていいものだと思っていなかった」という答えが返ってきました。
言わないまま更新を見送り続けるのが、いちばんもったいない選択です。採用する側も、前の会社で状況を変えようと動いたのか、動いた結果どうなったのかは必ず確認します。社内で一度でも申し出ていれば、たとえ通らなかったとしても、面接で説明できる材料になります。
契約の途中で抜けたい場合
体調を崩している、ハラスメントを受けているといった事情があるなら、更新を待たずにすぐ自社へ相談しましょう。この場合、案件変更はキャリアの希望ではなく、働き続けられるかどうかの問題になります。
それ以外の理由なら、次の更新を区切りにしたほうが、引き継ぎも次の案件探しも進めやすくなります。契約の途中で急に抜けると、客先にも自社にも負担がかかり、次の案件を紹介してもらう際にその経緯を説明しなければなりません。
入場して1〜2か月で言うのはあり?
入場から1〜2か月で言い出してもかまいません。ただ、その前に、慣れていないからつらいのか、案件の構造そのものに問題があるのかを分けて考えてください。
業務の進め方や質問する相手がまだ分からないだけなら、もう少し続けるうちに解消する余地があります。反対に、担当工程が最初から固定されている、使用技術が希望とまったく違う、一人常駐で技術的な相談先がないといった構造の問題は、時間が経っても変わりません。後者なら、早めに営業へ相談する価値があります。
短期間で現場を離れると、次の案件を探す際に理由を説明する場面が出てきます。だからこそ、どちらの問題なのかを自分の言葉で説明できる状態にしてから伝えたほうが、営業も客先に話を通しやすくなります。
どう伝える?案件変更が通りやすい伝え方の型
事実と次にやりたいことを分けて伝える
相談の中身は、今の現場で起きている事実、次の案件で実現したいこと、引き継ぎへの協力姿勢の3つでまとめます。営業はあなたの話を客先や社内への説明にそのまま使うので、気持ちを訴えるより、数字や出来事で語れる情報のほうがはるかに役立ちます。
たとえば「残業が多くてつらいです」と言われても、営業は何を基準に次の案件を探せばよいか分かりません。「直近3か月の残業が月40時間を超えているので、次は20時間程度の現場を希望します」と伝えれば、それがそのまま次の案件を選ぶ条件になります。
事実として伝えたいのは、直近数か月の残業時間、担当している工程と使っている技術、一人常駐かチーム配属かといった体制の情報です。メモ程度でかまわないので、相談の前に書き出しておきましょう。
不満を、次の案件の条件に言い換える
不満はそのまま口に出すのではなく、次の案件に求める条件の形に置き換えて伝えます。
| 避けたい言い方 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 今の現場はきついです | 残業が月◯時間で推移しているので、次は◯時間程度の現場を希望します |
| もう辞めたいです | 退職ではなく、次の更新で案件を変える相談です |
| リーダーと合いません | レビューや相談ができる体制の現場を希望します |
| すぐに抜けたいです | 更新に合わせたいので、いつまでに伝えればよいか教えてください |
言い換えは、本音を隠すための作業ではありません。営業が手を動かせる形に整えているだけです。特に「辞めたい」という言葉は、営業の頭の中で退職の相談に切り替わってしまうので、案件を変えたいだけなら最初に「退職の話ではない」と添えておくと、話が早く進みます。
わがままに見せないために添える3つのこと
案件を変えたいと希望すること自体は、わがままではありません。ただ、希望だけを伝えて後の調整をすべて会社に任せると、受け取る側にはそう見えてしまいます。
そこで添えたいのが、引き継ぎに協力する意思、次に向けて自分で学んでいること、更新のタイミングに配慮していることの3つです。特に引き継ぎへの協力は、営業がいちばん気にする後任探しの不安を和らげます。学習については、資格の勉強中である、個人で何かを作っているといった事実を一言添えるだけで、営業が客先にあなたを提案するときの材料になります。
「変えてくれないなら辞める」は言っていいか
最初の相談で使う言葉ではありません。何度相談しても動いてもらえず、本当に転職を考え始めた段階でだけ、選択肢の一つとして伝えるものです。
交渉を有利に進めるための脅しとして使うと、営業との信頼関係が崩れ、その後の相談が通りにくくなります。言うなら、実際にそうする覚悟ができてからにしましょう。
【例文】案件変更を相談するメール・口頭の伝え方
メールでは、件名、現状の事実、次の希望、最後に添える一文の順に書きます。口頭で伝える場合も、この順番で話せば内容が伝わりやすくなります。
開発工程や技術の経験を積みたい場合
お疲れさまです。◯◯です。
現在の案件では、結合テストと試験仕様書の作成を中心に担当しています。今後は実装や詳細設計の経験を積みたいと考えており、次回の契約更新に合わせて、開発工程に関われる案件をご紹介いただけないかご相談させてください。
業務の合間にJavaの学習を進めており、現在は個人でWebアプリを作っています。引き継ぎには協力しますので、一度15分ほどお時間をいただけますでしょうか。
テスト担当から開発側へ移るまでの道筋は、テストエンジニアからプログラマーへ転職する方法で詳しく解説しています。営業には、開発に移りたいという希望だけでなく、学んでいる言語や作ったものといった事実を添えると、話がぐっと具体的になります。
運用監視から構築・設計へ進みたい場合
お疲れさまです。◯◯です。
現在の案件では、サーバーの運用監視と一次切り分けを担当しています。障害対応を通じてシステム構成を理解する機会が増えたため、次の案件では構築や設計に関われる環境を希望しています。
現在はAWSの資格取得に向けて勉強中です。次回の更新に合わせてご相談したいので、今後の進め方を教えていただけますでしょうか。
監視業務をどこまで続け、いつ構築・設計に進むべきかは、運用監視は何年続けるべきかを解説した記事で整理しています。営業への相談の場でキャリア論を長く語る必要はなく、次にやりたい業務を一文で示せれば十分です。
求められるスキルに追いつけない場合
お疲れさまです。◯◯です。
現在の案件では、◯◯の実装で想定以上に時間がかかっており、チームのスケジュールに影響が出始めています。プロジェクトに迷惑をかける前に一度ご相談したいと考え、ご連絡しました。
◯◯については学習を続けていますが、次の案件では、現在のスキルに合った業務から担当できる環境を希望しています。今後の進め方についてご相談させてください。
このケースで避けたいのは、できませんとだけ伝えて終わることです。どの業務でつまずいているのか、どこまでなら一人で対応できているのかを書き出しておけば、営業は次の案件を選ぶときにそのまま判断材料として使えます。
残業や稼働条件が理由の場合
お疲れさまです。◯◯です。
現在の案件では、直近3か月の残業が月◯時間、◯時間、◯時間となっています。次回の更新に合わせて、残業を月20時間程度に抑えられる案件への変更をご相談したいと考えています。
対応可能な案件や、相談すべき窓口について教えていただけますでしょうか。
残業時間は、必ず月ごとの数字で書きましょう。眠れない、朝起きられないといった形で体調に影響が出ているなら、案件の希望としてではなく、働く環境への対応を求める相談として伝えます。その場合は更新を待たずに送ってください。
一人常駐や人間関係が理由の場合
お疲れさまです。◯◯です。
現在は一人で常駐しており、コードレビューや設計の相談を受ける機会がほとんどありません。今後の技術力の伸び方を考え、次はレビューを受けられる体制の案件か、チームで参画できる案件を希望しています。
次回の更新に合わせてご相談したいので、候補になりそうな案件があれば教えていただけますでしょうか。
人間関係を理由にするときは、個人名や悪口を文面に残さないようにしましょう。何が業務に支障を出しているのかを具体的に書けば、「リーダーと合わない」と書くより、営業はずっと動きやすくなります。
帰社日や面談で口頭で切り出す場合
口頭なら、まず結論から入ります。
理由を聞かれたら、事実と希望を順番に話します。
話し終えたら、次にいつ連絡をもらえるのかまで確認しておきましょう。口頭で伝えた内容は、その日のうちにチャットで短くまとめて送っておくと、後で言った言わないにならずに済みます。
次の案件の希望を伝えるときのポイント
条件は譲れないものとできればに分けて、3つまでに絞る
次の案件への希望を思いつくまま並べると、条件が増えるほど営業が紹介できる案件は減っていきます。
先に決めたいのは、今の自分にとって何を最優先にするかです。技術を伸ばす時期なら開発環境を、心身を立て直したい時期なら稼働条件を優先し、それ以外は妥協できるラインを決めておきます。たとえば、残業を月20時間程度に抑えることだけは譲らず、実装に関われることとチームで参画できることは叶えばうれしい条件にする、という具合です。
全部を満たす案件はまず出てきません。優先順位がはっきりしていれば、営業は必ず満たすべき条件と、できれば考慮する条件を区別して案件を探せます。
提示された次の案件は断ってもいい?
提示された案件を断ること自体は問題ありません。ただし、なんとなく合わなそうという理由では、営業は次に何を探せばよいか分からなくなります。断るなら、条件のどこが合わないのかを伝えましょう。
その判断のために、案件を受ける前に営業から次の情報を聞き出しておきます。
- 担当する工程
- チームの体制と、一人常駐かどうか
- 使用する技術
- 残業の実態
- 契約期間
- 商流(客先から自社までに何社挟まっているか)
実装の経験を積みたいのにテスト専任の案件を提示されたなら、担当工程を理由に断れます。残業の実態が分からない案件は、断る前に、まず営業に確認してもらいましょう。
とはいえ、断り続ければ待機が長引くのも事実です。譲れない条件を満たしているかどうかで判断し、叶えばうれしい条件の不足だけで断るのは避けたほうが無難です。
なお、案件を受けた後の面談で聞かれる質問や落ちる理由については、SESの案件面談で聞かれる質問と落ちる理由をまとめた記事で解説しています。
次の案件が決まるまでの待機期間の扱いを確認しておく
案件の切れ目に待機期間が出たとき、給与が満額支払われるのか、減額されるのかは会社によって異なります。雇用契約書や就業規則に書かれていることもあるので、相談の段階で営業に確認しておきましょう。
ここを確かめずに動くと、案件は変わったのに収入が想定より減っていた、という事態になりかねません。待機中に自社でどのような業務をするのかも、合わせて聞いておくと安心です。
希望に説得力を持たせる材料
資格の取得や学習の実績は、営業が客先にあなたを提案するときの材料になります。開発に関わりたいという希望なら、学習中の言語と作ったもの、クラウドの構築に進みたいならAWS認定の勉強状況、という具合に、希望と学習内容をつなげて伝えると説得力が増します。
反対に、次にやりたい業務と関係のない資格をいくつ並べても、営業は使いどころに困ります。学ぶ内容は、希望する案件から逆算して選んでください。
案件変更を断られた・取り合ってもらえないとき
まず断られた理由を聞く
断られたら、引き下がる前に理由を聞きましょう。多くの場合、理由は後任が見つからない、次に紹介できる案件がない、時期が悪いの3つのいずれかです。
どの理由かによって、次の更新までに自分が打てる手が変わります。後任が見つからないのが理由なら、引き継ぎ資料を先に整えておけば、交代のハードルが下がります。次の案件がないなら、条件の優先順位を見直すか、希望に近い案件が出たときに選ばれやすいよう学習を進めておくのが現実的です。時期の問題なら、いつなら検討できるのかを具体的な月で聞き出しておきます。
これも面接で聞いた話です。案件変更を申し出た応募者が、営業から「前の人もすぐ抜けたので、もう少し続けてほしい」とだけ返され、理由を聞き返さずに引き下がりました。結局その現場に1年近く残ったそうです。本人は後から、「後任がいないのが理由だったなら、引き継ぎ資料を先に作って次の更新で相談し直す手があった」と振り返っていました。
断られた場面で聞くべきなのは、何がそろえば動けるのか、という一点です。
希望を文面で残し、次の更新に向けて相談し直す
口頭だけの相談は、営業の記憶に頼ることになります。相談した日付、伝えた事実、希望した条件は、メールかチャットで残しておきましょう。
次の更新の2か月前が近づいたら、前回の文面を添えて「前回ご相談した案件変更の件で、改めてお時間をいただけますか」と送ります。記録があれば話が途中で途切れず、前回どこまで進んだのかを双方がすぐに確認できます。
記録を残すのは、営業を追い詰めるためではありません。次に何をすればよいのかを、お互いに見失わないためです。
営業以外の窓口に相談する
営業に何度相談しても進まないなら、上長や人事に話を持っていきましょう。会社として案件を変えられないのか、担当営業の判断で止まっているだけなのかは、別の窓口に聞いてみて初めて分かることがあります。
そのときに役立つのが、先ほどの相談記録です。いつ、どんな理由で相談し、どんな回答があったのかを見せれば、上長や人事も状況をすぐにつかめます。営業との相性に問題があると感じる場合も、いきなり担当の変更を求めるより、相談が進んでいないという事実を先に伝えたほうが、話を聞いてもらいやすくなります。
「途中で抜けるなら損害賠償」と言われたら
案件変更や退職の相談をした際に、違約金や損害賠償をちらつかせて引き止める会社もあります。労働基準法16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償の額をあらかじめ決めておく契約を結んだりすることを禁じています。「途中で抜けたら◯万円払え」といった取り決めは、これに当たります。
ただし、実際に発生した損害の賠償を求めること自体までが禁止されているわけではありません。そう言われたら、その場で支払いを約束したり、書面にサインしたりせず、言われた内容や渡された書面を保存しておきましょう。請求の根拠や金額に納得できない場合は、各都道府県の労働局や労働基準監督署に置かれている総合労働相談コーナーや、弁護士に相談できます。
退職そのものを考える段階に進んだら、SESを辞めるときの伝え方と退職の手順を確認してください。
体調に影響が出ているなら、案件変更の相談より先にやること
眠れない、食欲が落ちた、強い不安が続く、休日も疲れが抜けないといった状態なら、案件変更の相談より体調を優先してください。医療機関を受診し、必要に応じて診断書を出してもらえば、会社も正式な対応を取らざるを得なくなります。
社内に産業医や相談窓口があるかも確認しておきましょう。厚生労働省の「こころの耳」によると、月80時間を超える時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合、医師による面接指導の対象になります。自分が当てはまるかどうかは、会社の産業医や相談窓口に確認してください。
体調の問題は、我慢して案件を続ければ解決するものではありません。
何度相談しても変わらないなら、問題は案件ではなく会社にある
会社側に問題があるサイン
正しい窓口に、適切な時期に、具体的な希望を添えて伝えても状況が動かない。そこまでやったのであれば、原因はあなたの伝え方ではなく、会社の側にあると考えてよいでしょう。
次のような状況が続いている場合は、特にその疑いが強くなります。
- 案件を変えても、毎回似たような業務の案件しか紹介されない
- 次の案件の希望を聞かれる面談や、キャリアの相談をする場がない
- アサインされる案件に一貫性がなく、経験が積み上がっていかない
- 相談すると「努力が足りない」で片づけられる
こうした状況は、会社の営業力や商流、社員のキャリアを支える仕組みに原因があることが多く、エンジニア一人の交渉ではどうにもなりません。案件を変えても似た案件を繰り返すだけになってしまいます。今の会社と比べるために、エンジニアの希望を案件選びに反映できる会社がどのような特徴を持っているかは、ホワイトなSES企業の見分け方で確認できます。
社内でもう一度粘るか、会社を変えるかの判断
次の更新の目安すら示されない、体調に影響が出始めている、希望する案件が今後も出てこないと営業から言われた。この3つのどれかに当てはまるなら、社内で待ち続けても状況が変わる見込みは薄いと判断してよいでしょう。
反対に、時期が悪いだけで、次の更新で動くと具体的な月まで示されているなら、もう一度だけ粘る価値はあります。SESを何年目で見切るべきかという年数の視点で考えたい人は、SESは何年で転職すべきかを年次別にまとめた記事も参考になります。会社を変えると決めた後の動き方は、SESを辞めると決めたら進める退職の手順と、引き止めへの対応にまとめています。
会社に残るかどうかを決める前に、今の経験でどのような求人があるのかだけでも見ておくと、判断がぐっと現実的になります。IT業界に詳しいレバテックキャリア、ギークリー、テックゴーの3社については、この記事の最後で紹介します。
案件を変えると決まったら|引き継ぎと最終日までの動き方
客先への報告は、営業からの指示を待ってから
案件の変更が決まっても、自分から客先に伝えるのは待ってください。営業と客先の調整が終わる前に話してしまうと、現場の体制や契約の手続きが混乱します。
客先にいつ、誰に、どこまで伝えるのか。最終日はいつにするのか。こうした点は営業の指示に従い、あなたはその段取りに沿って引き継ぎを進めることに集中しましょう。
引き継ぎ資料に入れておく項目
引き継ぎ資料には、少なくとも次の項目を入れておきます。
- 担当している業務と、その目的
- 作業の手順と注意点
- 関係者と連絡先
- まだ解決していない課題
- 使っているツールと資料の保存場所
目指すのは、後任が資料を読むだけで業務を始められる状態です。自分しか分からない略語や書き方を使っていないかを、最後に見直しておきましょう。
アカウント・資料・個人メモの整理
最終日が近づいたら、業務で使っていたアカウントや資料、個人的に書き溜めていたメモを整理します。客先の情報が個人の端末や個人のアカウントに残っていると、離任後に情報漏えいを疑われかねません。
ただし、資料の返却や削除は、客先と自社のルールに従って進めます。引き継ぎに必要な資料まで消してしまわないよう、削除する範囲は事前に確認しておいてください。
最終日まで品質を落とさない
抜けることが決まると、どうしても気が緩みます。しかし、次の案件を紹介してもらえるかどうかは、どんな技術を持っているかだけでなく、前の現場をどう離れたかでも左右されます。
最後まで引き継ぎを丁寧に済ませた人には、営業も安心して次の案件を任せられます。案件変更は現場との関係を断ち切ることではなく、手順を踏んで関係を整理することだと考えて、最終日まで動きましょう。
まとめ
SESで案件を変えたいなら、最初に話す相手は客先ではなく自社の営業です。時期は契約更新の2か月前を目安にし、残業時間や担当工程といった事実と、次の案件で実現したいことを分けて伝えましょう。不満は次の案件の条件に置き換え、引き継ぎへの協力を添えれば、営業はその内容を客先や社内への説明にそのまま使えます。
断られた場合は、何がそろえば動けるのかを聞き、相談の内容を文面で残したうえで、次の更新に向けてもう一度相談します。営業で止まっているなら上長や人事にも話を持っていき、体調に影響が出ているなら案件の話より先に自分の健康を守ってください。
そこまで手を尽くしても何も変わらないなら、問題は案件ではなく会社の側にあります。今の会社に残ることだけを前提にせず、外にどのような選択肢があるのかを知ったうえで、次の一手を決めましょう。
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案件を変えても状況が変わらない人へ|SES経験者の転職に強いエージェント3選
案件変更の相談を重ねても状況が変わらないなら、今の会社に残るかどうかを判断するために、外の求人を知っておく必要があります。ここで紹介する3社は、登録したからといってすぐに転職しなければならないわけではありません。まずは今の経験がどう評価されるのかを知り、社内に残る場合と比べる材料として使ってください。
レバテックキャリア
レバテックキャリアは、ITエンジニアとクリエイターに特化した転職エージェントです。技術や開発工程の話がそのまま通じるので、テスト中心、監視中心といった今の担当範囲を伝えたうえで、その経験が自社開発や受託開発の求人でどこまで評価されるのかを具体的に確かめられます。
案件変更を申し出ても似た案件ばかり紹介されるという人は、自分の経験の評価が社内と社外でどれくらい違うのかを知るだけでも、残るか動くかの判断がしやすくなります。評判はレバテックキャリアの評判まとめで確認できます。
ギークリー
ギークリーは、IT・Web・ゲーム業界専門の人材紹介会社です。業界を絞っている分、SESのほかに自社開発、受託開発、事業会社の社内SEなど、SES経験者が次に検討する業態の求人をまとめて見比べられます。
今の会社で案件を変えるのか、会社そのものを変えるのかで迷っている人にとっては、外の求人にどのような働き方があるのかを一度見ておくことが判断材料になります。評判はギークリーの評判まとめで確認できます。
テックゴー
テックゴーは、ITエンジニアのキャリアアップ転職を支援するエージェントで、面接対策に力を入れています。SESからの転職では、面接で前の現場で状況を変えるために何をしたかを聞かれる場面が多く、社内で案件変更を申し出た経緯をどう説明するかは、準備の有無で差が出ます。
社内での相談が通らなかった経験も、伝え方しだいで、自分のキャリアに向き合って動いた実績として話せます。その整理まで手伝ってもらいたい人に向いています。評判はテックゴーの評判まとめで確認できます。
ほかのエージェントも比べたい人は、エンジニア転職におすすめのエージェント・サイトを比較した記事を参考にしてください。
FAQ(よくある質問)
入場して3か月で案件を変えたいと言ってもいい?
言ってかまいません。ただ、慣れればなくなるつらさなのか、担当工程や体制といった案件の構造からくる問題なのかを分けたうえで相談しましょう。構造の問題なら時間が経っても変わらないので、早めに営業へ伝える価値があります。
案件変更を申し出ると、評価や次の案件に響く?
自社の窓口に、更新の時期を考慮して相談する限り、申し出たこと自体で評価が大きく下がることはまずありません。響くのは、客先に直接言う、何も伝えずに急に抜けるといった手順を飛ばした動き方のほうです。
同じ現場のまま、担当業務だけ変えてもらうことはできる?
客先の体制に余裕があれば、できる場合もあります。営業に「現場を離れるのではなく、担当業務だけ変えられないか」と聞いてみてください。同じ現場で業務を変えられれば、引き継ぎや待機の負担がほとんど発生しません。
客先から「残ってほしい」と言われたら?
引き止めてもらえたことにはお礼を伝えつつ、残るかどうかは自社の営業と相談して決めると答えておきましょう。残る場合は、いつまで残るのか、その間に何が改善されるのかを営業を通じて確認しておかないと、同じ不満を抱えたまま次の更新を迎えることになります。
案件変更は何回までなら許される?
回数で一律に決まるものではありません。ただ、短い期間で何度も変更を繰り返すと、次の案件を探すたびに理由の説明を求められます。問われるのは回数より、毎回の変更理由と、次の案件で何を得たいのかがはっきりしているかどうかです。
次の案件が決まるまでの給料はどうなる?
会社によって扱いが違います。満額支払われる会社もあれば、減額される会社もあるので、雇用契約書や就業規則を確認し、分からなければ相談の段階で営業に聞いておきましょう。





















